国内の「売らない店」市場をけん引する米国発の「b8ta(ベータ)」を運営するベータ・ジャパン(東京・千代田)。同社の北川卓司代表取締役が、売らない店の今後を探る本連載。今回は、同じくドイツで「売らない店」モデルを展開するスタートアップ、_Blaenk(ブランク)のマーティン・ブレセム代表をゲストに迎える。両社のサービスを活用する事業者の成功例、データの利活用方法、ビジネスモデルの違いなどについて意見を交わした。

Zoomで対談を行うベータ・ジャパンの北川卓司代表取締役(左)、_Blaenk(ブランク)のマーティン・ブレセム代表(右)。もともと交流がある2人ということもあり、終始和やかな雰囲気で対談は進んだ
Zoomで対談を行うベータ・ジャパンの北川卓司代表取締役(左)、_Blaenk(ブランク)のマーティン・ブレセム代表(右)。もともと交流がある2人ということもあり、終始和やかな雰囲気で対談は進んだ

_Blaenkは、店舗の空きスペースとブランドをマッチング

――ブレセムさん、まず自己紹介をお願いできますか?

マーティン・ブレセム氏(以下、ブレセム) 私は今32歳で、2019年に_Blaenkを創業しました。大学ではメディアマネジメントや広告を学び、その後MBA(経営学修士)を取得。卒業後は広告代理店勤務を経て不動産分野で起業した後、ベンチャーキャピタルで働きました。現在はドイツ・ケルンで活動しています。_Blaenkは、20年にシード(創業初期)の資金調達を実施しました。

――_Blaenkもb8taと同様、「売らない店」モデルのビジネスを展開していますが、b8taと異なる点はありますか?

ブレセム b8taは、ベータ・ジャパンが運営する直営店舗にブランドが出品しますよね。それに対して_Blaenkは、既存の店舗の空きスペースをポップアップストアとして売り出し、商品を展示したいブランドとマッチングしています。

 _Blaenkに出品するブランドは、ポップアップストアや実店舗を運営するための専門知識や経験を持っていないことがほとんどです。そのため販路を拡大しようとしても、いきなり小売りに進出するのは難しさがあります。かといって、消費者とのタッチポイントづくりに寄与する小売りを無視するのも得策ではありません。なので私たちが店舗スペースを借り、それらを期間限定で貸し出し、さらに店頭に立つスタッフ、マーケティングや分析機能、決済など、ブランドが必要な様々なサービスを提供するのはいいアイデアではないかと思いついたんです。

 そこで試しに2カ月間スペースを貸し出してみたところ、多くのブランドがこのアイデアを気に入ってくれました。このパイロットプロジェクトが成功を収めたので、本格的に展開を開始し、今に至ります。

北川卓司氏(以下、北川) _Blaenkが自社店舗を構えるのではなく、既存の店舗の中に_Blaenkのエリアがあるというイメージですね。どんなところに_Blaenkがあるのですか?

ブレセム 例えば携帯電話通信会社の「ボーダフォン」の店舗内にあります。ある店舗では15平方メートルほどのスペースに、携帯電話の購買層との相性がいい商品を展示しています。

_Blaenkのロケーション例。_Blaenkのスペースは、常時15平方メートルから40平方メートルのサイズで展開しているという(出所/_Blaenk)
_Blaenkのロケーション例。_Blaenkのスペースは、常時15平方メートルから40平方メートルのサイズで展開しているという(出所/_Blaenk)

 展示しているのは、例えば電動スクーターです。店舗を訪れた消費者は試乗もできますし、スタッフから説明も受けられます。消費者がQRコードを読み込むなどして店内から電動スクーターの販売ページにアクセスしてもらえれば、後日製品を購入したかどうかのトラッキングも可能です。

店内でデータを取得し、企業の商品改善に役立てる

北川 今は自社店舗を所有していないということですが、将来的な考えとしてはどうですか?

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