
日清食品が2022年5月30日にオンラインストアを皮切りに発売した「完全メシ」シリーズが、計画比2倍程度の好発進を切っている。また、完全メシブランドを冠した「あんぱん」やポテトチップス、カツ丼などの開発も進行中だ。日清食品の安藤徳隆社長とフードテックエバンジェリストの外村仁(Hitoshi Hokamura)氏の対談(特集第3回)の中で明らかになった。
日清食品が展開する「完全メシ」シリーズは、「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」と「完全メシ 豚辛ラ王 油そば」、グラノーラ、スムージー2種の計5品。2022年5月30日に日清食品グループ オンラインストアで発売し、その後、都内のセブンイレブン約2500店で販売されている。順次エリアを拡大し、秋ごろには他の小売店にも広げていく計画だ。
シリーズの売りは、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」で設定された33種類の栄養素を摂取できる「完全食」であること。三大栄養素である炭水化物、たんぱく質、脂質のバランスを理想値にしたうえで、食物繊維、ビタミン、ミネラル、必須脂肪酸なども過不足なく摂取できる。減塩してもおいしい、栄養素を加えてもえぐみや苦みを感じない技術など、これまで日清食品が培ってきた技術を生かした。
完全メシブランドのカレーメシは1個429円(税込み)と、レギュラー品(同261円)と比べて高い設定。「高価格、かつ新しいコンセプトなので、最初はなかなか理解してもらえないかもしれないと心配していたが、『待ってました!』という声が多かった」と日清食品の安藤徳隆社長は話す。
実際、発売2週間の6月中旬時点で、シリーズの販売数は計画比で2倍程度と好調。リピート率も2桁以上に達しており、「通常の商品でここまでの実績はなかなかない」(安藤社長)という。
完全メシに飛びついたのは40~50代の男性が中心で、即席麺のメインユーザーと重なる。とはいえ、販売実績が積み上がるにつれて30代の割合も増えているという。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)が気になる層だけではなく、健康意識が高い人でも「ガッツリ食べたい」という潜在ニーズを掘り起こしつつある。女性については、グラノーラやスムージーといった戦略アイテムの露出を高めていくことでリーチしていく。
SNSでは、完全メシについて「ジャンクなものを最大限ヘルシーな形で出してきた」といった驚きの声が多いという。安藤社長も、「完全食というと、普通の食品メーカーはそのものズバリの健康的な商品を出すと思うが、日清食品は違う。(完全メシに対する)SNSの反響はまさに我々が望んでいたもの」と話す。
確かに即席麺や即席カレーだけで食事を終えるのは、気が引ける人も多いだろう。だからこそ、それが健康的となれば手を伸ばしやすくなる。そのギャップを安藤社長は「ヘルシージャンク」と表現する。
このコンセプトを最大限生かすため、完全メシのカレーメシとラ王に関してはパッケージからして黄色と紺のストライプをド派手にあしらったという。そればかりか、完全メシのカレーメシのパッケージには、「栄養バランスを考えるのが、めんどくせぇヤツらに!」と、ド直球のコピーも大きく書かれている。もともと健康的なイメージが強いグラノーラやスムージーは、さすがに若干おとなしいカラーリングになっているが、それでも完全メシのロゴのインパクトは大きい。
今回、完全メシが好発進を切れたのは、偶然ではない。その背景には、技術的、マーケティング的に意図して積み上げてきたものがあった。
完全メシ好調の“土台”をつくった商品とは?
技術的な系譜からいえば、日清食品は19年に完全食の即席パスタ「All-in PASTA(オールインパスタ)」を発売している。これは、「とにかくパスタにすべての栄養素を入れること、栄養素のえぐみや苦みを最小限にすること」(安藤社長)を目指したプロトタイピング的な取り組みだったという。ここから技術を大きくブラッシュアップしてきたことが、完全メシにつながる。
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