世界に誇る日本のフードテック最前線 第3回

2015年の日清食品社長への就任時から、「Beyond Instant Foods」をスローガンに掲げている安藤徳隆社長。「カップヌードル」などの既存事業とは別軸で、「もう一つの日清をつくる」と急ピッチで進める新事業が、21年に発表した「完全栄養食プロジェクト」だ。多くの大企業がイノベーションのジレンマに陥る中で、なぜ日清食品は抜け出せたのか。

日清食品社長、日清食品ホールディングス副社長・COO(最高執行責任者)の安藤徳隆氏
日清食品社長、日清食品ホールディングス副社長・COO(最高執行責任者)の安藤徳隆氏

 日清食品が進める「完全栄養食」は、日本人の食事摂取基準で設定された33種類の栄養素をバランス良くすべて摂取できるよう設計された食事だ。1食当たりのカロリーを500キロカロリーほどに抑えながら、しっかりおいしい。ガッツリ系のカツ丼やナポリタン、ビーフカレーなど、皆が好んで食べる普段のメニューを次々と完全栄養化している。約4週間で約40食を完全栄養食に置き換えた臨床試験では、参加者の80%以上で体重や内臓脂肪面積が減少するなど、変化が見られたという。

 この我慢しなくて済む完全栄養食の普及により、食を通じたウェルビーイング(心身の健康や幸福)を向上させ、健康な人が病気になるのを未然に防ぐことを目指す。日本を「未病対策先進国」に引き上げ、それをテコに世界も救う――。極めて壮大で、かつ世界のフードテックでも類を見ない新たなチャレンジだ。

 日清食品の完全栄養食プロジェクトはどのような未来をつくり出すのか。なぜ日清食品は前に進めるのか。フードテックエバンジェリストで、日本で初めて食の大企業と世界のスタートアップが協業する場となる「Food Tech Studio - Bites!」を立ち上げた外村仁(Hitoshi Hokamura)氏が安藤社長と対談し、その真価に迫った。

米シリコンバレー在住の外村氏との対談はZoomで行った
米シリコンバレー在住の外村氏との対談はZoomで行った

日清食品はもともと「ラーメン再合成カンパニー」だった

外村仁氏(以下、外村) 2021年の末に完全栄養食のトンカツ定食を試食しましたが、違和感なく普通の食事として楽しめました。あらゆる食事メニューを完全栄養化していくチャレンジは、これまでと大きくステージが異なります。なぜ、日清食品はそこに踏み出せたのか。まずは技術的背景から聞かせてもらえますか。

安藤徳隆氏(以下、安藤) コンセプトとしての完全栄養食は子供でも考えられるものですが、あらゆる食事のメニューを置き換えていくのは非常にハードルが高い。日清食品が半世紀以上も磨きまくってきたインスタントラーメンの技術を応用できたのが大きなところです。

 僕らは、いうなれば「ラーメンの再合成カンパニー」なんですね。街のラーメン店が何十時間もコトコト煮込んで作るスープも、こだわりの麺も具材も、すべて再合成してお湯をかけるだけで食べられるようにできる。しかも、そん色ない味を再現可能です。

完全栄養のカツ丼。しっかりとした味付けのおいしいカツ丼で、何ら違和感はない
完全栄養のカツ丼。しっかりとした味付けのおいしいカツ丼で、何ら違和感はない

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