世界に誇る日本のフードテック最前線 第6回

「豆腐こそ世界最強のプラントベースフードだ」。こう宣言するのは豆腐業界の大ヒットメーカーとして知られる相模屋食料(前橋市)の鳥越淳司社長。その言葉通り、ウニのような豆腐、肉肉しいがんもを発売し、さらにはカルビ風油揚げ、イクラのような豆腐まで開発している。「国産フードテックの逆襲」、その全貌を明らかにする。

相模屋食料が発売してヒットしている「うにのようなビヨンドとうふ」
相模屋食料が発売してヒットしている「うにのようなビヨンドとうふ」

 「これはまさにウニだ・・・・・・」

 2022年3月に発売されるや、驚きの声がネットであふれているのが、相模屋食料が発売した「うにのようなビヨンドとうふ」だ。関東を中心とした発売ながら僅か2カ月で想定の5倍となる60万パックを突破。5月末に増産体制を整え、全国への出荷を予定するヒット商品だ。

 食べると、口触りがやわらかでクリーミーな食感、口中にウニの風味がぱっと広がる。生臭さは皆無、極めて濃厚な高級ウニよりはあっさりとしているが、不思議と箸が進むやみつきの味だ。

 「本物のウニは、一口目はすごくおいしいと感じても、2口目、3口目と食べるに従って最初の感動が薄れてくる。そう考えると、一般の人が求める“ウニ”に必要なことは、ぱくぱくと食べ続けられるクセになる味わいなのではないか。『ずっとウニらしい』が満足感につながる」

 そう話すのは、相模屋食料の鳥越淳司社長だ。アニメ「機動戦士ガンダム」とコラボした「ザクとうふ」を12年に発売したことを皮切りに、14年には不二製油の豆乳クリームを使用し、濃厚かつクリーミーな新感覚の豆腐「マスカルポーネのようなナチュラルとうふ(現・BEYOND TOFUナチュラル)」を提案。前者は30~40代の男性層、後者は20~30代の女性層と、これまで豆腐に関心が薄かった生活者を振り向かせた。

相模屋食料の鳥越淳司社長
相模屋食料の鳥越淳司社長

 その後も、「BEYOND TOFU」シリーズとして、プロテインバーやピザ、ドリンクタイプなど、ラインアップを拡充。その中で、初めての「和」テイストの商品として発売したのが、うにのようなビヨンドとうふだ。

 開発のきっかけは、親交のある不二製油グループ本社・前社長の清水洋史氏の一言にあったという。「豆腐はシンプルな味で何にでも合う。それ自体はいいことだが、クセのある味ではないから『また食べたい』とはなりにくい」

 これを受けて鳥越氏は、豆腐にマッチして日本らしいクセのある味とは何か考えた。たどり着いたのが、魚介のうまみを引き出した「だし」だ。だしが生み出す磯の風味と豆腐を掛け合わせ、かつ驚きやクセのあるものは・・・・・・そう連想していって最初に焦点を当てたのがウニだった。

うにのようなビヨンドとうふ
うにのようなビヨンドとうふ

 開発する中で苦心したのは、物性のバランスだ。豆乳クリームからの加工工程のノウハウを生かし、そのまま食べてもおいしい質感や食感を保ちながら、かき混ぜるだけでソース状になる商品に仕上げた。これにより、パスタにあえたり、リゾットに加えたりといったアレンジ料理が可能になる。ウニ風味の驚きと同時に、調味料としての“豆腐”という新境地が開けたわけだ。

 こうして相模屋食料は豆腐の可能性を広げてきた。それと同期するように、世界では急速に植物肉を中心としたプラントベースフードが脚光を浴びるようになってきた。フードテックの象徴ともいえるこのトレンドに相模屋食料はどう向き合うのか。

 すでに鳥越氏の答えは出ている。「豆腐こそ世界最強のプラントベースフード。良質なたんぱく源として日本人を支えてきたヘルシーな伝統食品であり、今こそ胸を張るべきだ」。無理に「本物の肉」を追い求めるのではなく、伝統技術を掘り起こしてあくまで豆腐文化を売る。「国産フードテックの逆襲」(鳥越氏)だ。

 その戦略商品といえるのが、21年9月に発売した「肉肉しいがんも~INNOCENT MEAT~」。そして、23年春に向けては「カルビのようなビヨンド油揚げ」の開発も進んでいる。2つの商品の開発ストーリーには、豆腐屋としての相模屋食料の誇りが詰まっていた。

豆腐屋が考える「植物肉」はなぜ生まれたのか

 まず、豆腐業界の現状について言及しておきたい。この20年あまり豆腐の販売額は微減傾向が続いており、異常に安い販売価格のつけが回り、昨今の大豆価格の高騰でも非常に苦しい状況に陥っている。実際、豆腐製造施設数は05年に約1万3000軒だったものが、19年には6000軒を割り込み、半減以下になっている。

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