
国内で「フードテック元年」といわれた2020年から2年がたち、日清食品をはじめとした大手企業やスタートアップが続々と独自の取り組みを打ち出している。海外の話題が先行しがちな分野だが、実は日本の食文化や技術を背景とした「国産フードテック」が、世界を驚かせる進化を遂げている。見えてきた「3つの光明」を解説する。
三菱総合研究所の試算によると、世界のフードテック市場規模は2020年に24兆円だったものが、2050年には279兆円へ急拡大する見込み。この巨大市場を捉えようと、世界ではスタートアップのみならず、大手企業も新ジャンルの育成に本腰を入れ、投資や研究開発を加速させている。22年1月に開催された世界最大の家電見本市「CES 2022」でも、初めてフードテックカテゴリーが登場するなど、いまだ熱気はさめやらない。
フードテックは非常に幅広い概念だ。日本でフードテックイベント「スマートキッチン・サミット・ジャパン」(22年は9月1~3日に開催)を主催するシグマクシスが作成した「フードイノベーションマップver.2.0」(下画像)を見ても分かるだろう。大豆ミートなどの植物肉や培養肉、ミールキット、フードデリバリー、IoT家電といった身近な領域から、生産、パッケージ、物流まで、食にまつわるバリューチェーンのすべてで今、テクノロジーと掛け合わせた食の進化が見られる。
これらは、おいしさや利便性の進化だけではなく、地球環境の保全や人々の健康をアップデートし、時には失われつつある食文化の継承に資するものでもある。カバーする領域が広いが故に取り組みの濃淡があるのは否めないが、万人と関わりのある食分野には確かなビジネスチャンスがある。食品や家電業界に限らず、すべてのビジネスパーソンが注視すべきトレンドと言える。
では、日本での現状はどうか。海外ほどベンチャーキャピタルなどによる投資が加熱しておらず、評価額10億ドル超えのユニコーン企業が多数生まれている状況にはない。一方で、食品メーカーが有する技術力や日本のユニークな食文化を背景に、世界でも類を見ないような「国産フードテック」が数々生まれているのも事実だ。それも、後に「ガラパゴス」と皮肉られるようなものではなく、世界に打って出るポテンシャルを秘める。それでは、芽吹き始めた日本発のフードテックに見る「3つの光明」を解説していこう。
植物肉、完全食・・・問われるのは「日本らしさ」
「日本の食品メーカーが持つおいしさの設計技術や粉末の溶けやすさといった加工技術、製造技術など、どの領域においても世界トップレベルの技術が眠っている」と話すのは、シグマクシス常務執行役員でスマートキッチン・サミット・ジャパン主催者の田中宏隆氏だ。ところが、これまで多くは裏方に回り、生活者の目に見える分かりやすい形では出てこなかった。
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