
ギターメーカーの米フェンダー・ミュージカル・インストゥルメンツ(以下、フェンダー)のサブスクリプション型オンラインレッスンサービス「Fender Play(フェンダープレイ)」が22年5月、日本に本格上陸した。米国で先行して開始され、新型コロナウイルス禍の中で多くの利用者を獲得。楽器というリアルの商品とデジタルの融合でLTV(顧客生涯価値)を高めた好例だ。巣ごもり需要を捉え、2020年にフェンダーが過去最高の売り上げをたたき出す原動力になった。
Fender Playはギターやベースの初心者に、オンライン動画で弾き方を教えるサブスクサービス。17年に米国などで開始したサービスで、日本でもWebブラウザーでは利用できていたが、22年5月から本命のチャネルであるスマートフォンアプリでも利用可能になった。
ただし、現時点ではすべての動画コンテンツが英語での利用となる。今後3年をかけて日本向けのサービスを強化する計画を立てており、動画を日本語でも見ることができるようにするほか、日本で人気が高い楽曲のレッスン動画を追加する方針だ。
「レディー・ガガ『バッド・ロマンス』の歌メロをギターで弾いてみましょう」。パソコンやスマホの画面でFender Playの動画を開くと、講師の動画とタブ譜(押さえるフレットを示した譜面)が表示され、指の使い方や弦の弾き方を丁寧に説明してくれる。
動画は4000種類以上もあり、ロック、ブルース、ポップ、カントリーといったジャンルから選べる。3~5分と短いものが多く、心理的なハードルを下げ、誰もが挑戦しやすくしている。料金は月額払いで2400円(税込み)となる。
「ギターを始めた人の10人中9人は、最初の3~6カ月でやめてしまう」。フェンダーデジタルのジェネラルマネージャー、イーサン・カプラン氏が市場分析をすると、そんな結果が見えてきた。せっかくギターを買っても「指先が痛い」「弾き方がよく分からない」「Fのコードが押さえられない」といった理由で、弾かなくなり、ギターはたんすの肥やしになってしまう。LTVやカスタマーサクセスの文脈で言えば、オンボーディング(導入)での支援が不十分で、顧客が離れてしまう状態が続いていたわけだ。
カプラン氏の市場分析によると、想定以上に「ギター市場は初心者が占めていた」という。初心者のギター継続率が伸びれば、ギター人口が増え、市場全体を底上げできる。ギターに関わるLTVが増え、結果的にフェンダー製品を購入してもらう機会の増加が期待できる。
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