
日本コカ・コーラのスマートフォン向けアプリ「Coke ON」はダウンロード件数が3700万を超え、メーカーのアプリとしては驚異的な利用者を獲得している。この3700万件のユーザー基盤から自動販売機の購買データを取得。データを利活用し、2021年4月にはサブスクリプション事業にも参入した。購買データに基づくコミュニケーションとサブスクを組み合わせることで、LTV(顧客生涯価値)の向上につながっている。
日本コカ・コーラは2022年6月、スマートフォン向けアプリ「Coke ON」で提供しているサブスクリプションサービス「Coke ON Pass」のプラン内容を更新し、「おトクプランMAX」を開始した。Coke ON Passは月額2700円(税込み、以下同)を支払うと、Coke ON対応自動販売機で月31本まで好きな飲料と引き換えられるサービスだ。21年4月に日本コカ・コーラ初の自動販売機のサブスクサービスとして提供を開始した。
更新前のプランの課題点は、1日当たりの引き換え可能本数にあった。1日1本までの制限があり、毎日引き換えられないとサービス価値を最大限享受できない設計だったのだ。これがサービスを解約する理由の1つになっていた。例えば、主に勤務先の自動販売機で利用するために契約したとしても、新型コロナウイルス感染症拡大の影響下で在宅勤務した場合、そもそも外出しない日もある。こうした理由で毎日引き換えられなかった場合、料金以上の価値を得られなくなり、解約につながりやすくなる。
そこで、新たに提供を始めた、おトクプランMAXでは、1日に2本まで交換できるように変更した。朝に缶コーヒーと引き換え、仕事の合間にリフレッシュしようと夕方に炭酸飲料と引き換えるといった利用方法が可能になった。
Coke ON Passのプラン更新はこれが初めてではない。21年11月にはより手軽なプランとして、月額1980円で月20本まで交換可能なプラン「おとくプラン20」を追加している。
「サービス開始当初は1日1本プランを提供したが、インタビュー調査や解約時のアンケートなどから、契約本数を交換できないと損した気持ちになり不満につながっていることが分かった。そこで、より気軽に使える20本までのプランを投入した。さらに31本のプランでは1日2本まで引き換え可能にした。使いにくいと感じているポイントを改善して、顧客によりフィットさせることを目指している」と日本コカ・コーラのマーケティング本部IMX事業本部デジタルプラットフォーム部の宇川有人シニアマネジャーは言う。
サブスクサービスで肝になるのは「解約率」と「継続率」だ。顧客の利用動向を分析しながら、プランやサービス内容を改善して、より顧客にフィットさせていくことが解約防止につながる。それにより継続率を高水準化させ、LTVを最大化させることが事業成長には欠かせない。
日本コカ・コーラがサブスクサービスの開始後、わずか1年の間に複数にわたってプランを追加したり、更新したりしているのは、顧客のニーズに合わせて改善していることの証しだ。こうしたスピード感のあるサービス改善点の発見や、そもそものサブスク事業開始決断の裏側には、16年のサービス開始以降、6年にわたって積み重ねてきたCoke ONの利用データがある。
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Coke ONは対応自動販売機と連係して使えるスマートフォン向けアプリ。アプリを起動したスマホを対応自動販売機に近づけて、Bluetooth(近距離通信無線規格)で接続してから商品を買うと、1本の購入につき1つアプリ上でスタンプがたまる仕組みだ。スタンプを15個ためると、1本無料で引き換え可能になる。購入ポイントがたまる、日本コカ・コーラ独自のポイントプログラムだ。
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