次世代経営指標「LTV」 第2回

「LTV(顧客生涯価値)とは最終利益と同じぐらい重要な経営指標である」。そう断言するのは、2018年にオルビス(東京・品川)の社長に就任した小林琢磨氏だ。同氏は社長就任後、LTVを軸とした経営へと構造改革を実施した。LTV重視の大胆なリブランディング、組織へのLTVの浸透に尽力し、増益を達成するなど、その経営手腕に注目が集まる。小林氏が、実践するオルビス流LTV経営のすべてを語った。4つのポイントにまとめて解説する。

オルビスの小林琢磨氏。東京・表参道にある体験型店舗「SKINCARE LOUNGE BY ORBIS」にて
オルビスの小林琢磨氏。東京・表参道にある体験型店舗「SKINCARE LOUNGE BY ORBIS」にて

 化粧品製造販売のオルビスは、22年5月に創業35周年を迎えた。同社の創業初年度の1987年に初めて商品を購入し、当時から35年にわたって今でも買い続けている顧客は1000人以上いるという。主力商品である化粧品はもちろん、下着までもオルビスで購入する超がつくほどのロイヤルカスタマーだ。35年分を積み重ねたLTVは極めて高い。その顧客層にとってオルビスは、人生に寄り添ったブランドだと言っても過言ではないだろう。

 企業・ブランドが顧客に愛され続けていることを示す指標は多数ある。ブランド好意度、商品・ブランドの推奨度を測る「NPS(ネット・プロモーター・スコア)」などが代表例として挙げられる。だが、それらの指標の行きつく先はLTVだ。LTVとは、顧客が企業・ブランドにもたらした利益の総量である。

「NPS」は経営指標としては不十分

 「LTVはもはやKPI(重要業績評価指標)のような中間指標ではなく、KGI(重要目標達成指標)そのもの。EC事業に限らず、リピート購入を促す商売において、LTVが成否のほぼすべてを決めるぐらいの重要度になっている」

 オルビスの小林琢磨社長はこう言い切る。そして、次のように続ける。「顧客が企業やブランドに感じている価値を分析するための手法として、NPSやアンケートなどがある。だが、NPSが高くても、LTVは低いということはある。人に薦めたいおしゃれなブランドだと認識しているものの、自分は買っていないということはありがちだ。顧客にとって本当に価値を提供し続けられているかどうかを換算するうえで、LTVほど適した指標はない」

小林 琢磨 氏
オルビス株式会社 代表取締役社長
2002年にポーラ化粧品本舗(現ポーラ)へ入社し、10年にポーラ・オルビスグループの社内ベンチャーで起ち上げた敏感肌専門ブランドDECENCIA(ディセンシア)社長に就任。同ブランドを50億円のビジネスに導いた後、17年にオルビスマーケティング担当取締役、18年社長に就任。ポーラ・オルビスホールディングス取締役を兼務。早稲田大学大学院でMBA(経営学修士)を取得。

 小林氏は社内ベンチャーの社長などを務め、18年に現職に就いた。社長就任後、「LTV経営」への変革を掲げ、構造改革に注力してきた。それほどLTVを重視する最大の理由は、経営者として「適切な投資判断の基準」になるからだ。例えば、その1つに新規顧客開拓への投資判断がある。

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