米国の次世代ブランドやリテールテックを紹介するニュースレター「CEREAL TALK(シリアルトーク)」執筆者の1人、沼田雄二朗氏が米国の最新トレンドを紹介する当連載。第2回は、「パーパス」のあるブランドが支持される理由や、実際に米国でZ世代を中心に人気を集める3つの新興ブランドの取り組みを紹介する。
事業規模にかかわらず、企業やブランドに「パーパス」が求められる風潮が加速している。なぜこれほどまでにパーパスは重視されるのか? 米国ブランドやリテールトレンドに詳しい沼田氏が、注目を集める3つの新興ブランドを例にその理由を解説する。
① メンタルヘルスに関する啓蒙活動を行うアパレルブランド「Madhappy(マッドハッピー)」
② アジア料理に特化した使い切りのスターター(手軽に料理を作るためのソースや調味料)を販売する「Omsom(オムソム)」
③ 人気のアスレジャーカテゴリの先駆け「Outdoor Voices(アウトドアボイセズ)」
なぜ今パーパスのあるブランドが強いのか
米国ではこの7~8年でD2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)ブランドが大幅に増え、競争が激化しました。Facebook広告をはじめとする比較的安価に消費者にリーチできる手段が増えたことや、Shopify(ショッピファイ)のような素早く構築できるECプラットフォームが登場したことなどが要因です。そのため、圧縮梱包式のマットレスに限っても、一時期は数百のブランドがあるといわれていました。
参入プレーヤーが増える一方で、AppleのiOSポリシー変更(※編集部注:個人情報保護のため、iOS14リリース時、サードパーティーがユーザーデータを追跡できないようにポリシーが変更された)によって新規顧客の獲得が難しくなるといった事態も起こっており、ブランドにとってはビジネスの根幹を揺るがすような状況が続いています。
そのような中、より強い共感と支持を生む、「パーパスドリブン」=社会的存在意義に重きを置いたブランドの存在感が増してきました。米PR会社、エデルマンの調査によると、調査対象となった約8000人の消費者のうち約半数は、「政府よりもブランドの方が社会的問題を解決する能力を持っている」と考えており、「購入の際にはどのような信念を持つブランドなのかという点を重視している」そうです。これは特に若い世代に顕著で、日ごろSNSを通して様々なコミュニティーの生の声を聞いているからかもしれません。
ブランドの創業者などによって発信される社会的な問題や常識への挑戦、またそれを体現する活動は消費者の共感を得られると、SNSなどでシェアされやすくなります。そのため、こうした発信を続けることで広告などに比べて比較的広範囲にリーチでき、顧客とのエモーショナルなつながりを生むことにもなります。その結果、ブランドが新規顧客やファンを得るケースが増えています。
若者のメンタルヘルス改善への取り組み
全米精神障害者家族会連合会の報告では成人の5人に1人が何かしらのメンタル面でのトラブルを抱え、米疾病対策センター(CDC)によると高校生の44%が慢性的な失望感を持っているそうです。このように、米国の若者たちにとってメンタルヘルスの問題が深刻化しています。そうした中、アパレルウエアの販売やブランド体験を通してメンタルヘルスに関する啓蒙活動を行っているのが、2017年に米マッドハッピーが創業したロサンゼルス発のアパレルブランド「Madhappy」です。
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