
日本の城の天守を貸し切り、“一日城主”として泊まる特別な体験。そんなサービスが、バリューマネジメント(大阪市)が運営する「大洲城キャッスルステイ」だ。値段は1泊100万円。城に泊まる狙いは何か、どんな人が利用しているのだろうか。
「一国一城の主(あるじ)は男の夢だ」などというと、今の世の中ではひんしゅくを買うかもしれない。しかし、高い天守から眼下を見下ろし、目に入るすべてが自分の領地であったとしたら、それはさぞかし気持ちいいことだろう。そんな気持ちを体験できる場所が愛媛県にある。1日だけ“城主”になれるのだ。
愛媛県大洲市にある大洲城は鎌倉時代に築城されたとされる。後に藤堂高虎らにより近世の城郭として整備され、元和3(1617)年以降、明治の版籍奉還まで、大洲藩加藤家6万石の居城となった。明治になると、いくつかの櫓(やぐら)を除きほとんどの建築物は取り壊されたが、2004年、伝統的な工法を用いた木造による天守の復元事業により、往時の姿をほぼ正確に復元することができた。
この大洲城に宿泊できるサービスは、バリューマネジメントが運営する「大洲城キャッスルステイ」だ。天守と、取り壊しを免れた国の重要文化財の2つの櫓を貸し切りにして宿泊できる。
この城に泊まれるのは1日1組で、料金は1人55万円(税込み)。利用は2人からなので1泊100万円を超える。「『1泊100万円』『城に泊まれる』というキーワードは簡潔で分かりやすく、インパクトがある。サービス開始に当たってはこのインパクトを最も重視した。最初に価格ありきで、事業性の調査やマーケットリサーチ、マーケティングといった部分から内容や価格を詰めていくのとは真逆の発想だった」とバリューマネジメントの吉田覚氏は言う。「100万円という料金がまず先にあり、その値段に見合うだけの価値をどのようにしたら提供できるかを考えてサービスをつくり込んできた」(吉田氏)というのはユニークな考え方だろう。
1泊100万円は知名度向上の戦略
もともと同社は歴史的資源を保存するだけでなく、資源として活用して観光需要を取り込み、地域に産業と雇用を創出する街づくりに取り組んでいる。歴史地区全体をホテルとして捉え、地域内に点在する複数の歴史的建造物をそれぞれホテルの一室として整備した、分散型ホテルを全国各地に展開している。
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