自社の存在意義とは何か。自分は何のために働くのか。一人一人が理解し、主体的に行動しているのが、全国1700店舗で4万人のパートナーと呼ぶ従業員が働くスターバックスコーヒー ジャパン(以下、スターバックス)だ。2022年7月20日(水)と21日(木)に開催する「日経クロストレンドFORUM 2022」では、スターバックスの水口貴文CEO(最高経営責任者)が、「ミッションを軸にした経営」について語る。
認知症の方やご家族の対話に店舗を活用する「認知症カフェ」、聴覚障がい者と聴者が共に働く「サイニングストア」、店舗の売り上げを一部寄付し、若者に教育や経験の機会を届ける「ハミングバード プログラム」──。スターバックスでは、従業員が主体的に手掛けた店舗構想にあふれている。
その範囲は、店舗運営、イベント、顧客とのコミュニティーづくりまで、限りがない。
従業員によるさまざまな提案の根幹にあるのが、存在意義と行動規範を示す「Our Mission and Values」だ。世界84カ国、3万3000店舗を展開する世界的なコーヒーチェーンにまで成長させた米スターバックスCEOのハワード・シュルツ氏のビジョンがベースになっている。
日本では、各部門のメンバーにアドバイザーとして水口CEOや人事部門の責任者が加わり、11人がミッションやバリューズの翻訳に携わった。こだわったのは、シンプルで誰にでも伝わりやすい言葉だ。
【ミッション】
人々の心を豊かで活力あるものにするために――ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから
【バリューズ】
私たちは、パートナー、コーヒー、お客様を中心とし、Valuesを日々体現します。
・お互いに心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくります。
・勇気をもって行動し、現状に満足せず、新しい方法を追い求めます。スターバックスと私たちの成長のために。
・誠実に向き合い、威厳と尊敬をもって心を通わせる、その瞬間を大切にします。
・一人ひとりが全力を尽くし、最後まで結果に責任を持ちます。
私たちは、人間らしさを大切にしながら、成長し続けます。
店舗に立ち、自分は何を成し遂げるのか。スターバックスの店舗で働くパートナーたちは皆、このミッションやビジョンを自分に落とし込み、顧客一人一人に向き合う。店舗は、顧客や地域に向けてできることは何かを考え、自由に実現する場だ。
2021年10月の取材で、スターバックスの森井久恵CMO(最高マーケティング責任者)はこう語っている。「私も入社直後の店舗研修で、大学生のパートナーに『お客様が何を欲しているかを察し、自分に何ができるかを考えてやってみてください』と教わった」。
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バリューズ(行動規範)の冒頭には「パートナー、コーヒー、お客様を中心とし」と書かれている。スターバックスでは本社を「サポートセンター」と呼ぶ。スターバックスは、あくまで店舗で接客するパートナーを主とした組織であることを示している。
さらに、それぞれの店には「店舗ビジョン」がある。例えば、ゆったりとくつろげる上質なサービスを目指す「六本木ヒルズ ウエストウォーク ラウンジ店」では、「HEARTFULL LOUNGE」を掲げている。ビジョンは毎年、ストアマネジャー(店長)が見直し、自分たちならではの店づくりを展開している。
こうした店舗を支えるのは、パートナーたちだ。そのためパートナーの採用は店長の権限とされている。店長は、パートナーが入社した後も、4カ月に1回程度、1時間ほどの面談を続ける。ミッションやバリューズ、店舗ビジョンに基づき、何を考え、どう行動したか。さらに、今後「自分がやりたいこと」を各自が目標に据える。話し合うのは、決して数値的な内容ではなく、自身の存在意義や主体的な行動についてだ。そして、達成できれば評価につながる仕組みがある。
なぜ、スターバックスでは、従業員が生き生きとかつ主体的に裁量を発揮できるのか。水口CEOは、仕組み以上に何を伝えているのか。「日経クロストレンドFORUM 2022」に登壇する水口CEOの講演「ミッションを軸とした経営」をぜひご覧いただきたい。
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