アサヒビールが好調だ。「アサヒスーパードライ」が躍進し、「マルエフ」「生ジョッキ缶」とヒット商品も相次いでいる。なぜ復活を遂げているのか、その原動力となっているアサヒビール専務兼マーケティング本部長の松山一雄氏が、7月20日、21日に行われる「日経クロストレンドFORUM 2022」に登壇。アサヒのマーケティングの全貌に迫る。
アサヒビールの基幹ブランド「アサヒスーパードライ」が2022年3月、発売36年目で初めてフルリニューアルを実施。これが奏功し、同3月の缶容器の販売数量は前年比4割増となった。通称「マルエフ」と呼ばれる「アサヒ生ビール」や、フルオープンの「生ジョッキ缶」も軒並みヒット。“微アル”市場でも21年発売の「ビアリー」が好調に推移している。アサヒは20年、キリンに11年ぶりにビール類での首位の座を明け渡したが、巻き返しは順調に進んでいるように見える。
これらのマーケティング施策を指揮しているのが、専務兼マーケティング本部長の松山一雄氏だ。2022年7月20日(水)と21日(木)に開催予定の「日経クロストレンドFORUM 2022」で松山氏が登壇し、「現在進行中、アサヒビールのマーケティング改革」と題して講演を行う。
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松山氏はP&Gなどでマーケティング畑を渡り歩き、18年にアサヒビールで32年ぶりの外部から起用された取締役として着任した。同社の商品ポートフォリオをどうしていくのか。スーパードライのフルリニューアルを決める前、松山氏が2020年の夏に書いたメモが残っている。
メモには「スーパードライ リバイタリゼーション」の言葉があった。再生、蘇生、復興の意味を持つリバイタリゼーション。松山氏は「スーパードライをどうしていくかは、ポートフォリオ戦略の一丁目一番地に据えていた」と語る。具体的にどう再生させるのか、メモには、当時まだ世に出ていない「生ジョッキ缶」を成功させること、そして「辛口を超えた新辛口にする」とも書かれていた。
とはいえその段階では、まだ即座に実行に移そうとは考えていなかった。「大きさ、重要性、あとはステークホルダーが社内外にたくさんいるブランドであることを考えると、やみくもにバッと変えてというわけにはいかない。スーパードライは『聖域』とは言わないけれども『大黒柱』。期待を背負っているブランドだからこそ、やれることをまず十分にやり尽くした上で、それでもダメならリバイタリゼーションに踏み切るしかない。そういう気持ちがあった」(松山氏)。
残念ながら、決断の時はすぐに訪れた。「アサヒスーパードライ 史上最高のうまさ実感キャンペーン」。酒税法が改正された同年10月、アサヒが打った戦略は吉と出なかった。「消費者の心を動かすには至らなかった。これが決断した直接の契機」と松山氏も認める。これまでの戦略の延長線上ではダメだ、そう確信したという。
変化は、消費者には驚くほど伝わらない
「裏では商品の改良をしたり、効率を高めたり、コミュニケーションもより良くしようと言ってきたが、お客様から見たら些細(ささい)なこと。ほんのわずかな変化でしかなかった」(松山氏)。メーカーにとっては「こんなに変えているのに」と思っても、消費者には驚くほど伝わっていない。商品開発やマーケティングで、こんな経験をしたことのある人は多いのではないだろうか。「自己満足で終わってしまっていた部分はある」と松山氏も率直に認める。
フルリニューアルで必ず守らなければいけないのは、「お客様の頭の中のブランドを否定してはいけない」ということ。銀色のパッケージ、黒い「Asahi」のロゴ、そして辛口という武器……。「売れ行きが下がっているとはいえ、今もたくさんのお客様に愛されているブランドを、もっと大きく伸ばしていきたいというときには、今のお客様からスタートすべきなんだと思う。フルリニューアルなのに少し矛盾して聞こえるかもしれないが、今のお客様を大切にしなければいけない」と松山氏は言う。
松山氏が持つ、ブランドの基本設計図がある。まずは誰に、何を、どのように、という「Who/What/How」。マーケティングの基本の部分であり、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング、4P(Product、Price、Place、Promotion)などはここに含まれる。ただ、これらはあくまでもブランドの必要条件であり、これだけで十分にブランドの意義性や差別性を確立できる時代ではなくなってきている、と松山氏は言う。
どのようにフルリニューアルを果たしたのかは、以下の記事で詳報しているのでぜひ読んでもらいたい。日経クロストレンドFORUMでは、スーパードライのフルリニューアルに加え、前述の「生ジョッキ缶」「マルエフ」などの事例を交えながら、松山氏が「驚き、感動、ワクワク」を追求するマーケティングの全貌を語る。
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