ローソンが販売する紅茶のチルドカップ飲料が、発売5カ月で740万本を超えるヒット商品になった。「飲みきりサイズで100円」というコンセプトが、20~40代のユーザーの心をつかんだ。火が付いたきっかけは、Z世代を狙って甘さを抑えた「アールグレイ #ちょい甘」だ。

■「アールグレイ #ちょい甘」シリーズ
Z世代にヒットした「アールグレイ #ちょい甘」
ローソンのチルドカップ飲料にヒット作が登場
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 チルドカップ飲料とは、プラスチックのカップに入った飲料のこと。飲みきりサイズである利便性や、フレッシュで新鮮なイメージを押し出し、市場を拡大してきた。

 ローソンが今注力しているのが、100円のチルドカップ紅茶だ。 2022年4月にプライベートブランドの「ウチカフェ」シリーズで、定番ラインアップとして「レモンティー」「アップルティー」を発売。次いでウチカフェシリーズとは別に22年8月に「アールグレイ #ちょい甘」(現在は販売終了)を追加した。

 それまでの「コンビニのチルドカップ飲料といえばコーヒー」という常識を覆し、紅茶という新機軸を打ち立てて勝負に出たところ、240ミリリットルで100円という手に取りやすい価格設定も奏功し、発売から5カ月で740万本を超えるヒット商品になった。

 中でも話題を集めたのは、「アールグレイ #ちょい甘」だ。専門店さながらの茶葉を使用したアールグレイティーで、名称通りスッキリとした「ちょい甘」な味わいが特徴。Z世代(1990年半ばから2010年代前半生まれ)を中心に人気を集め、発売1カ月程で約39万本を売り切った。

 勢いに火が付いたのはSNS(交流サイト)が発端だった。100円のワンコイン商品であることに加え、パッケージに描かれている和やかな表情をした犬のイラストが目を引いたためだ。しかもそれが「犬(ワンコ)がカップに入った(イン)したデザインという、ダブルミーニングなのではないか?」といううわさを呼び、SNSで拡散され、在庫が一瞬でなくなった。

 商品開発を率いた同社商品本部の久常真氏は「実は、意図的に犬のデザインにしたわけではない」と明かす。思いがけず、ワンコインのチルドカップ飲料が盛り上がったというわけだ。

 SNSでの話題のほか、人気が膨らんだのは、「ターゲットやシーンなどで想定外のニーズがあったから」と久常氏。具体的には、Z世代をメインターゲットにした「アールグレイ #ちょい甘」は、30~40代のユーザーの心を予想以上につかんだ。午後のリラックスタイム用として昼の販売数が伸びると想定していたが、実際は朝の時間帯のニーズも取り込めた。

 さらに、これまでペットボトル入りのソフトドリンクを中心に飲んでいた層を、紅茶のチルドカップ飲料に流れ込ませる現象を生んだ。「『いつものペットボトルドリンクとは別にもう1本、紅茶のチルドカップ飲料も買おう』という、新しい買い合わせでトータルの買い上げ点数が増える潮流もできた」(久常氏)と言う。

 商品開発にはZ世代の声が生かされている。久常氏は、「もともとZ世代トレンドのオリジナル商品を作りたいという機運が社内で高まっていたため、味とデザインに関しては、Z世代の声を吸い上げることを徹底した」と明かす。

 例えば、リサーチ段階で、人気の紅茶専門店の商品を取り寄せて試飲会を行ったところ、Z世代からの反応はのきなみ「甘すぎる」。美容健康意識の高いZ世代は控えめな甘さを好むことから、微糖のレイヤーに細かくグラデーションを付けた試作品でヒアリングを繰り返すなどした。その結果、「アールグレイ #ちょい甘」というヒット商品が生まれた。

ちょい甘ヒットにつながったウチカフェ紅茶の躍進

 「レモンティー」「アップルティー」に始まり、「アールグレイ #ちょい甘」で加速したローソンのチルドカップ飲料の躍進には、大きく分けて3つの要因がある。

右から順に「ウチカフェ レモンティー」「ウチカフェ アップルティー」
右から順に「ウチカフェ レモンティー」「ウチカフェ アップルティー」
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 まず、ニーズを丁寧にくみ取った点だ。以前は450~500ミリリットルが一般的だったペットボトル入りソフトドリンクも、最近は600ミリリットルのアイテムが増えるなど大容量化が進んだ。「コスパのよさにメリットを感じる層がある一方、『大きすぎて飲み切れない』という声も多く上がっていた」(久常氏)。そこで240ミリリットルという飲み切りサイズにしたところ、女性を中心としたニーズを捉えることに成功した。

 2つ目は、税込み100円という、ワンコインで購入できる価格設定。「社内では客単価が下がることを危惧する声が一部で上がったのも事実。ただ、物価上昇という背景も手伝って、今は消費者が『お金をかけたいもの』と『抑えるべきもの』に対して非常に敏感な時代。その中で、飲料は間違いなく『抑えるべきもの』にカテゴライズされる。『この価格なら一度くらい試してみよう』と思えるよう、ジャストワンコインで購入できる点にこだわった」(久常氏)

 3つ目は、透明なプラスチックカップのデザイン。SNSなどで拡散を促すよう工夫を施した。「若者に根強く支持される紅茶専門店のパッケージを参考にし、透明なデザインを選んだ」(久常氏)。透明なパッケージの場合、液色が商品のイメージを左右する重要な要素になるが、「液色のみで紅茶のおいしさを訴求するのが難しかった」。そこで、カップにそれぞれの色が薄く色づき、華やかに見える透明フィルムを採用。ルックスを磨いたことが売り上げ伸長につながった。

カップに華やかに見える透明フィルムを採用し、おいしく見えるよう訴求した
カップに華やかに見える透明フィルムを採用し、おいしく見えるよう訴求した
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 さらに、発売前の21年7月に行ったテスト販売が、紅茶のチルドカップ飲料の発売に弾みを付けた。当時、まだノンブランドの段階で、テストマーケティングとして「レモンティー」と「アップルティー」を全国販売していた。「販売後は即時品薄になる店舗が続出。供給が追いつかないほどだった」(久常氏)。このテスト販売で確かな手ごたえをつかんだことで、ワンコインで購入できる紅茶のチルドカップ飲料の定番商品化が決まった。

 なお、この時のテスト販売のフィードバックは、当時まだ開発中だった「アールグレイ #ちょい甘」のブラッシュアップにも生かされているという。「(レモンティーやアップルティーは)甘さに対するネガティブな声を反映してテスト販売に臨んだ。だがそれでも多くのZ世代からは『まだ甘い』という意見を受けた。そこで、アールグレイ #ちょい甘ではさらなる糖度の加減に注力した」(久常氏)

 ウチカフェシリーズには定番の「レモンティー」「アップルティー」の2アイテムのほか、22年8月には「ウチカフェ マスカットティー」といった季節によって変わるスポット商品も加わり、ラインアップを強化。それと並行して、「アールグレイ #ちょい甘」に続く、本命である Z 世代ユーザーの支持拡大に向けた新商品を展開していく予定だ。「見ていると癒やされる」と好評だった犬のイラストをほかの動物にシフトすることも検討中とのこと。「19年のタピオカドリンクブーム以来で、今年はチルドカップ飲料の棚が躍動している」と久常氏。今後、味もパッケージもブラッシュアップされた新商品に注目だ。