パンケーキの中にプリン、マカロン生地のクロワッサンといった、定番スイーツの特徴を掛け合わせた“ハイブリッドスイーツ”がコンビニの棚に並ぶ機会が増えている。巣ごもり需要の拡大で高単価・高品質のスイーツ市場が伸長し、口コミのしやすさも相まってこの流れはしばらく続きそうだ。

コンビニ各社がハイブリッドスイーツに力を入れている
コンビニ各社が、定番スイーツの特徴を掛け合わせた“ハイブリッドスイーツ”に力を入れている

 定番スイーツの特徴を掛け合わせた“ハイブリッドスイーツ”。言葉自体は2010年代から拡大し始め、コンビニでは20年にファミリーマートがふわふわのスフレの下にプリンがある2層構造の「スフレ・プリン」を発売し、コンビニスイーツとしてロングセラーヒットになった。

 22年に入り、コンビニ各社が再びハイブリッドスイーツのラインアップを強化している。ローソンは、333円(税込み、以下同)の「プレミアムロールケーキ」をパフェにのせた「プレミアムロールケーキパフェ 苺(いちご)果肉ソース入り」を5月に、カステラ×ケーキの「ふわふわカステラケーキ 2個入」(149円)、プリン×ティラミスの「埋もれるティラミスプリン」(343円)を6月に発売した。

■ローソン
ローソンの「ふわふわカステラケーキ 2個入」(左)、「プレミアムロールケーキパフェ 苺果肉ソース入り」(中央)、プリン×ティラミスの「埋もれるティラミスプリン」(右)
「ふわふわカステラケーキ 2個入」(左)、「プレミアムロールケーキパフェ 苺果肉ソース入り」(中央)、プリン×ティラミスの「埋もれるティラミスプリン」(右)

 ファミリーマートは、21年に発売して好評だった「パンケーキにプリン入れちゃいました!」(258円)を5月に、クロワッサン×マフィンの「クロワッサンマフィン」(138円)を6月に発売。セブン-イレブンはプリン×アイスの「7プレミアム プリンアイス」(278円)、ミニストップも「クロワッサンたい焼き つぶあん&カスタード」(220円)を6月21日に発売と、毎週どこかで新商品が登場するといった状況だ。

■ファミリーマート
ファミリーマートの「クロワッサンマフィン」(左)、「パンケーキにプリン入れちゃいました!」(右)
「クロワッサンマフィン」(左)、「パンケーキにプリン入れちゃいました!」(右)
■セブン-イレブン  ■ミニストップ
セブン-イレブンの「7プレミアム プリンアイス」(左)、ミニストップの「クロワッサンたい焼き つぶあん&カスタード」(右)
セブン-イレブンの「7プレミアム プリンアイス」(左)、ミニストップの「クロワッサンたい焼き つぶあん&カスタード」(右)

 駅ナカへの出店が多いコンビニ「NewDays(ニューデイズ)」も、クロワッサン×マカロンの「メロンクロワッサンダマンド」(165円)を5月に発売している。メロン味のマカロン生地をクロワッサンの形に焼き上げ、メロン味のクリームを入れた商品だ。

■ニューデイズ
ニューデイズの「メロンクロワッサンダマンド」。交通系ICカード『Suica(スイカ)』など購買データを分析すると、クロワッサンは他の商品と比べて女性の購入比率が高く、マカロンの中に入っているクリームは男性にも受ける。男女を幅広く狙えるのがメロンクロワッサンダマンドの特長という
「メロンクロワッサンダマンド」。交通系ICカード「Suica(スイカ)」など購買データを分析すると、クロワッサンは他の商品と比べて女性の購入比率が高く、マカロンの中に入っているクリームは男性にも受ける。男女を幅広く狙えるのがメロンクロワッサンダマンドの特長という

コンビニスイーツのニーズがコロナで変化

 ハイブリッドスイーツが増加する背景には、新型コロナウイルス禍での食シーンの変化がある。新型コロナ感染症の拡大とそれを受けての外出自粛、移動制限を受けて、遠くの専門店に行くよりも、近くのコンビニでスイーツを購入する人が増加。例えばファミリーマートの場合、「スイーツ部門の売り上げはここ5年間で1.5倍になった」と同社商品本部 FF・スイーツ部 スイーツグループ スイーツ担当の杉本隆彦氏は明かす。

 その結果、各社は専門店に引けをとらない味や品質を目指した商品を開発。250円以上の高価格・高付加価値スイーツのラインアップを拡大したことが、「高単価になりやすいハイブリッドスイーツに挑戦しやすい土壌が整ったのではないか」と杉本氏は見る。

 また、コンビニで購入したスイーツを家に持ち帰り、ゆっくり食べる人が増えたことで、コンビニスイーツの楽しみ方も変わった。コロナ禍以前はシュークリームやエクレアのようにワンハンドで食べられる需要が高かったが、家に持ち帰って食べる機会が増えれば「スプーンは使えない」「カップに入れない」といった開発時の縛りが減る。こうした環境の変化も、ハイブリッドスイーツの増加に影響していると見られる。

ニューデイズの「メロンクロワッサンダマンド」は、元々はワンハンドで食べやすいスティック型だった。コロナ禍で持ち帰り需要が増加したため、味と見た目を重視するように変更した
ニューデイズの「メロンクロワッサンダマンド」は、もともとはワンハンドで食べやすいスティック型の「チョコスティックダマンド」(写真)だった。コロナ禍で持ち帰り需要が増加したため、味と見た目を重視するように変更した

 ただ、「定番スイーツを組み合わせたハイブリッドスイーツの開発は、一からつくるより手間暇がかかる」と杉本氏。既存品をハイブリッドスイーツに適したサイズに変更し、組み合わせ相手となるもう一つのスイーツに合わせて味の濃さを再調整するなど細部までこだわると、試作品の数がかえって増えて開発効率が悪いためだ。

 それでもコンビニがハイブリッドスイーツを出す狙いは、新規顧客の獲得にある。コロナ禍で減少した顧客の来店頻度を上げるため、各社が目的買いや衝動買いを狙った商品開発を進めていた。店頭やSNS(交流サイト)の口コミで消費者の関心を誘い、物珍しさからついつい欲しくなる——。そんな商品を考えた結果、消費者の印象に残りやすいハイブリッド型に行き着いたというわけだ。

 杉本氏は「誰もが知るスイーツの組み合わせで、意外性もあるため、トライアルユースをしてもらいやすい仕立てになっている」と話す。ケーキの中にプリンが入っているといった意外性は口コミの拡散につながりやすく、実際、ケーキの断面を見せる“萌(も)え断”写真には多くの「いいね」がついていた。あまりコンビニを利用しない層にも効果的に訴求できる点も魅力の一つだった。

 行動制限が解除され、少し離れたスイーツ専門店まで足を運ぶ機会が増えるようになると、コンビニスイーツにとっては逆風になる。杉本氏は、「ここ2年でコンビニスイーツの認知度が飛躍的に上がったため、ハイブリッドスイーツなどの付加価値を高めた商品はまだ需要が高い」と見ている。

 ハイブリッドスイーツは日々研究しているわけではなく、別の商品の企画・開発中に偶然思いついたり、自社商品を試しに合体させてうまくいったりするケースがほとんどという。21年にブームを巻き起こしたマリトッツォ、現在ブーム真っただ中のカヌレがコンビニの棚をにぎわせており、近い将来、ハイブリッドスイーツの組み合わせの一つに加わるだろう。

注)紹介した商品は、一部の地域および一部の店舗では取り扱いのない場合、すでに販売が終了している場合がある。

(写真提供/ローソン、ファミリーマート、ミニストップ、JR東日本クロスステーション)

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