書籍『ファンをつくる力』を出版した、プロバスケB.LEAGUEの川崎ブレイブサンダースでマーケティング領域を統括する藤掛直人氏による本連載。今回はトップYouTuberのはじめしゃちょーさんをゲストに迎えた対談をお届けします。2022年で日本上陸15周年を迎えるYouTubeは、今やエンタテインメントの1ジャンルとしてすっかり定着。さらには、企業にとっても商品やサービスのPRに欠かせないツールとなりました。そのYouTubeでの認知を上げるために効果的な手法の1つが「コラボレーション」。これまでに複数回タッグを組んで動画制作をしている、はじめしゃちょーさんと藤掛氏にコラボレーションの効用について語ってもらいました。

はじめしゃちょー(右) 1993年2月14日生まれ、富山県出身。2012年に友人らとYouTubeへの投稿を開始し、のちに個人チャンネルを開設。マルチクリエーター型YouTuberとして活躍する。15年にはYouTube JapanのテレビCMに出演するなど、代表的な存在に。運用する3つのチャンネルのうち、メインの「はじめしゃちょー」が21年12月に登録者数1000万人を突破した。186cmの高身長で、高校までバスケット部に所属
はじめしゃちょー(右) 1993年2月14日生まれ、富山県出身。2012年に友人らとYouTubeへの投稿を開始し、のちに個人チャンネルを開設。マルチクリエイター型YouTuberとして活躍する。15年にはYouTube JapanのテレビCMに出演するなど、代表的な存在に。運用する3つのチャンネルのうち、メインの「はじめしゃちょー」が21年12月に登録者数1000万人を突破した。186センチメートルの高身長で、高校までバスケット部に所属

初コラボでは、あえて相手をリサーチしない

 2012年にチャンネルを開設し、21年12月にはチャンネル登録者数が1000万人を超え、動画の総再生回数は120億回に迫るはじめしゃちょー。一方、藤掛直人氏が所属する川崎ブレイブサンダースは、チャンネル登録者数がBリーグとサッカーのJリーグを合わせて1位と、日本のプロスポーツクラブにおけるYouTube活用の先駆者的な存在だ。

 その両者は、定期的にコラボレーションを行う関係でもある。初めてのタッグは20年10月。はじめしゃちょーも所属するマネジメント事務所「UUUM」にて、当時所属していたYouTuberが集まって活動していた「UUUMバスケ部」と川崎ブレイブサンダースが、床に置かれた輪の中を移動しながらバスケットで対決するという内容の動画を公開した。その後も共同での動画制作や川崎ブレイブサンダースのイベントにUUUM勢が出演するなどの交流が続き、8月30日には「はじめしゃちょー & 川崎ブレイブサンダース presents 『DREAM GAME 2022』」の開催も控える。

――まず、川崎ブレイブサンダースがUUUMさんとのコラボレーションを考えたきっかけを聞かせてもらえますか?

藤掛直人(以下、藤掛) 川崎ブレイブサンダースは、19年から本格的にYouTubeに注力して運用し始めたのですが、注力後に初投稿した3日後ぐらいにUUUMさんにコラボレーションを依頼したんです。はじめしゃちょーさんを含め、UUUMさんにはバスケ経験のあるYouTuberさんがかなり多くいらっしゃったので、ぜひコラボしたいなと。当時の川崎ブレイブサンダースのYouTubeチャンネル登録者数はまだ4000人くらいでしたので、今思うと我ながら無謀な突撃だったなと思うのですが(笑)。そこからお話が始まり、翌20年にUUUMさんとご一緒することができました。

はじめしゃちょー 僕はコラボレーションの話を会社から聞いたときに、個人的にはとても魅力を感じましたね。というのも、個人のプロ選手となにかをご一緒するのは比較的現実味があるんですけども、プロチームとのコラボレーションってなかなか可能性が低い話だと思って。

――その当時、川崎ブレイブサンダースというチームに関して持っていた印象は?

はじめしゃちょー ぶっちゃけた話をすると、それをきっかけにBリーグに興味を持ち始めたみたいな部分があったりします(笑)。ブレイブサンダースというチームは知ってはいたんですけども、どういう選手がいるとか、どういうプレースタイルのチームなのかといった点は、コラボのお話をいただいたのがきっかけで、少しずつ知り始めた感じです。

――このケースに限らず、初めてのコラボ相手だと、必ずしも詳しくは知らないということもあるかと思います。そういった場合に、詳しいリサーチなどはされるんですか。

はじめしゃちょー 逆に知らないほうが面白かったりするんですよね。というのも、視聴者さんのなかには、Bリーグを知らない方もいらっしゃると思うので、知ってる風に動画を作成しちゃうと、そうした視聴者さんが置いてきぼりになる。ある程度の情報はもちろん入れますけど、あまり知識を入れずに撮影の場で知っていくほうが、視聴者さんも一緒に理解ができるというか。川崎ブレイブサンダースさんと初めてのコラボのときも、あまり調べずに行かせてもらいました。

――UUUMバスケ部さんと川崎ブレイブサンダースさんの初めてのコラボレーションは、床に置かれた輪の中だけを移動しながらバスケをする、エンタテインメント性の高い内容でしたが、これは川崎さんのほうからの企画の提案だったんですか?

藤掛 そうですね、我々のほうからです。当時は、新型コロナウイルス拡大の初期で、感染対策を踏まえて、密にならない企画を提案させていただきました。輪が離れているので密接せず、ソーシャルディスタンスを保ちながらバスケをするという、苦肉の策ではありましたが。

はじめしゃちょー 「普通にやりてえ」って思ったのを覚えてます(笑)。ただ、試合が近かったんですよね。

藤掛 そうなんです。シーズン開幕直前だったので。

2021年3月にもUUUMと川崎ブレイブサンダースはコラボ企画を開催。川崎の選手とYouTuberの混合チームで対決する動画などを制作している
2021年3月にもUUUMと川崎ブレイブサンダースはコラボ企画を開催。川崎の選手とYouTuberの混合チームで対決する動画などを制作している

――続いて、21年3月にもコラボ企画をしていますよね。このときは、はじめしゃちょーさんのチャンネルで「バスケットボール100個で試合したらプロに勝てるんじゃね?」という動画を、川崎ブレイブサンダースのチャンネルでは「【1人で105得点!?】日本一のプロバスケ選手とYouTuberの混合チーム対決が予想以上に本気だった...」という動画を公開。2回目以降は、どういったスタンスで企画を決めたのですか?

はじめしゃちょー 川崎ブレイブサンダースさんとコラボさせていただくときは基本的に、こちらがしたい企画と川崎さんがしたい企画をお互いに持ち寄っていますね。僕のボール100個を使って試合をするという企画は、インパクトで言っちゃった感じです(笑)。プロとYouTuberが試合をした動画をつくるという事実がまずすごく重要だと思って、そのバリューにプラスして、ボール100個でプレーするっていう、バスケに詳しくない方が見ても強い企画と混ぜようと。

藤掛 企画を聞いたときはビックリしました(笑)。

はじめしゃちょー プロスポーツの選手とコラボする際には、「これ以上はダメです」とか縛りを設けられることも多いんですが、川崎さんは積極的に企画に乗ってくれるのですごく柔軟だなと思います。最後は、なんか玉入れみたいになってましたよね。プロがボール100個でプレーしてる絵がすごい新鮮だし。今でも、よくやっていただけたなと思います。次は1000個でお願いします(笑)。

――コラボレーションをしての効果や手応えをどうとらえていますか?

藤掛 まずは、普段バスケを見ない方やブレイブサンダースを全く知らない方に興味を持っていただくきっかけになればと思ってます。実際にはじめしゃちょーさんのファンの方など、新しく知ってくださる方も多かったですし、動画のコメントを見ると、「ブレイブサンダースって面白い」とか、「川崎ブレイブサンダースのニック(・ファジーカス)選手は優しい人」といったポジティブな反応が多かったので、ありがたいですね。

身内ノリにならないように、初めて見る人を意識する

――はじめしゃちょーさんは、選手の魅力を引き出そうといった意識はあるんですか?

はじめしゃちょー それはむずいっすね。なんて言えばいいんだろうな、エンタテインメント色の強い企画でも結局バスケってチームプレーで、その中で選手の個性が出るんですよね。例えば、ニック選手は身長が207センチメートルもあってめちゃくちゃ大きいんですが、その体でチームのためにブロックをしてくれると視聴者さんの印象に残るんですよ。僕は、そうした撮影中に自然に出た個性を編集で生かしていくっていう感覚です。無理やり、「この人をこういうキャラにしてやろう」とか考えても嘘っぽくなくなりますし。

 あと、動画を撮る前から知っていることをやろうとすると身内ネタに寄っちゃう気もしていて。川崎さんに限らず、例えば、僕の動画に普段から出ている後輩のけんすけすら、テロップでは「けんすけ」と出さずに「後輩」って出したりするんですよ。知っているファンの方だけでなく、誰が見ても分かりやすい説明となるように、身内ノリにならないようにというのは、いつも意識しています。

藤掛 我々もそこは意識しています。例えば、選手の名前や愛称だけを出しても、クラブを知らない人にはなかなか伝わらないと思うので、例えばタイトルや動画冒頭では「日本代表の前キャプテン」ですとか、「今季のMVPの選手」といった誰でも分かりやすい表現をするように工夫しています。特にはじめしゃちょーさんのようにパワーのある方とのコラボレーションでは、初めて接する方が多くなるので大事ですよね。逆に我々から、はじめしゃちょーさんにご提供できる部分は小さかったと思うんですけど……。

はじめしゃちょー いえいえ。まずプロフェッショナルの方と動画を撮らせていただけることに、僕は魅力を感じています。これはバスケに限らずなんですけども、プロの極上のプレーや技は、一般のYouTuberやクリエイターでは見せられないようなクオリティーのもの。視聴者さんはどちらかというと、我々クリエイター側の視点に立って物事とか動画を見ていると思うので、プロと試合をやってる感覚を味わえるというか。普通のクリエイターだとなかなか出せない体験を提供できるのは、僕にとってすごい効果があったなと思います。


 双方にとってメリットの大きいYouTube動画でのコラボレーション。後編では、コラボレーション相手の選定や企画の作り方など、コラボレーションを成功させる秘訣を聞いていく。

8月30日開催
はじめしゃちょー & 川崎ブレイブサンダース presents 「DREAM GAME 2022」~クリエイター最強チームがプロバスケチームに挑んでみた~
 21年3月にパートナーシップを締結し、これまで様々な取り組みを実施してきたUUUMと川崎ブレイブサンダース。はじめしゃちょーの「プロバスケの会場で、プロバスケクラブと本気の試合をしてみたい」という発案から、ブレイブサンダースのホームである川崎市とどろきアリーナにて「クリエイター最強チーム」がプロバスケ選手に挑む企画が開催される。

 「クリエイター最強チーム」には、発起人であるはじめしゃちょーのほか、水溜りボンド・カンタ、Lazy Lie Crazy【レイクレ】・ともやん、SAWAYAN GAMES・サワ、ヤンに加え、コムドット・ゆうた、うらたの計7人の参加が決定。当日はB.LEAGUEホームゲーム開催時と同じ会場設営を用意、チアやマスコットも出演するなどプロバスケットボールの試合と同等の環境を再現する。

 イベントは8月30日19時スタート。会場での観戦チケットはすでに完売しているが、当日の模様ははじめしゃちょーおよび川崎ブレイブサンダースのYouTubeチャンネルで生中継するほか、後日編集した動画をクラブとUUUMそれぞれのチャンネルにて公開する。
ファンをつくる力
デジタルで仕組み化できる2年で25倍増の顧客分析マーケティング
Bリーグのプロバスケットボールクラブ「川崎ブレイブサンダース」は、DeNAが運営を継承してから3年で、リーグNo.1の動員数を達成。チケットやグッズ販売といったチーム関連の売り上げも約2倍に拡大した。飛躍の原動力は、YouTubeやTikTokなどを積極的に使ったデジタル戦略にある。YouTube登録者数はBリーグのみならず、Jリーグクラブを含めてもNo.1。TikTokフォロワー数は日本のプロスポーツクラブでは読売ジャイアンツに次ぐ2位と、若年層を中心にプロ野球やJリーグも超えたファンを獲得している。本書では、これまでの歩みを振り返りながら、ファン層を広げてきたその取り組みを余すところなく公開。今やどんな商品、サービスを提供する企業でも求められる「ファンをつくる力」。そのために有益な方法論を、豊富な実例とともに明らかにする。

定価:1760円(10%税込)
発行:日経BP
発売:日経BPマーケティング

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