※日経エンタテインメント! 2022年5月号(4月4日発売)の記事を再構成

2021年4月に『少年ジャンプ+』で連載がスタートし、毎週火曜に更新され続けている『ダンダダン』。第1話の配信直後から圧倒的な画力とテンポの良さで読者を引き込み、『ジャンプ+』におけるヒットの1つの基準である100万閲覧をわずか2日で達成。コミックスの累計発行部数は4巻で120万部超(電子含む)、「全国書店員が選んだおすすめコミック2022」第1位、「マンガ大賞」第7位に選ばれるなど、連載開始から1年で大躍進を遂げた。

作者の龍幸伸は、2010年にマンガ家デビュー。『チェンソーマン』藤本タツキや『地獄楽』賀来ゆうじのメインアシスタントを務めてきた龍にとって、『少年ジャンプ+』における初連載となる。オカルトをテーマに、アクションやラブコメなど様々な要素が盛り込まれた『ダンダダン』は、どんなアイデアから生まれたのか。

幽霊はいる派の女子高生・綾瀬桃と、その同級生でいじめられていた怪奇現象マニアの高倉健(オカルン)が、互いに否定するUFOと怪異を信じさせるため心霊スポットで勝負するが、オカルンは妖怪ターボババアに呪われ戦闘モードに変身、一方の桃は宇宙人によって超能力に開眼 (C)龍幸伸/集英社
幽霊、UFO、怪奇現象などをテーマにアクションからラブコメまでてんこ盛り
幽霊はいる派の女子高生・綾瀬桃と、その同級生でいじめられていた怪奇現象マニアの高倉健(オカルン)が、互いに否定するUFOと怪異を信じさせるため心霊スポットで勝負するが、オカルンは妖怪ターボババアに呪われ戦闘モードに変身、一方の桃は宇宙人によって超能力に開眼 (C)龍幸伸/集英社
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最新4巻では、オカルンの金の玉を拾い能力が開花した同級生・愛羅も参戦。学校でネッシーと水中戦を繰り広げ…!? (C)龍幸伸/集英社
最新4巻では、オカルンの金の玉を拾い能力が開花した同級生・愛羅も参戦。学校でネッシーと水中戦を繰り広げ…!? (C)龍幸伸/集英社
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分からないほうが面白い

 ログライン(作品を一言で表すメモ)を書き溜めたノートがあって、それを読み返していたら、「『貞子vs伽椰子』が面白い」って普通の感想が書いてあって(笑)。「ここから作ってみようかな」という感じで始まりました。

 もともとオカルトが好きだったかというと、小学校の頃はやってはいたけど、そこまでではなかったんです。でも、実際調べ始めたらすごく面白くて。「分からないこと」ってけっこう面白かったりするじゃないですか。こういう現象や事件があったけど解決されていないものに興味をそそられる、UFOとかうさんくさいけど1回見てみたい、とか。分からないほうが想像力が湧くし、知っていることのほうがイメージしづらい。例えば電車の車窓で背景が流れていくとき、架空の自分が外をシュタタタタタッと走っているとか…妄想が好きなんですね。

 オカルトを語る人って、怪談専門、UMA(未確認飛行物体)専門とか分かれているんですが、幼い頃に見たテレビ番組では全部ひっくるめてなので、自然と幽霊も宇宙人もごちゃ混ぜになりました。

 バトルマンガは昔から好きでしたし、最初の読み切りのときに、担当の林士平さんから「変わるなら描いたことのないラブコメを描きましょう!」って少女マンガが100冊送られてきて(笑)、読んでみたら、ケンカして、でもどうにか仲直りして、みたいな少年マンガにない部分がすごく好きになって――カタルシスまで持っていくフリの部分で面白みが半減しちゃうともったいないので、そこに別のベクトルでギャグとか挟んでいったら読者も飽きずに読めるかな、とか考えながらいろいろ入れ込んでいます。

――様々な要素が絶妙なバランスで描かれ、かつ会話劇がテンポよく進み、独特の読後感を生んでいる。

 読みやすさは意識しています。技術的な部分にはなるんですけど、視線誘導や、セリフをどこまで書くか、画面内にコマを何個入れるかとか。あと、説明のセリフっぽいものは極力なくして、日常会話のなかで状況がある程度説明されるのが理想です。

 ラストは最初に決まったんですが、そこに至るストーリーラインは明確に決まってなくて、毎週ネームを進めるなかで考えています。主人公のオカルン、桃、どっちも自分にないキャラにしようと思っていて、「これはやらない」というラインは気をつけつつ。でも、まさかターボババアがこんなに出てくるとは思いませんでした(笑)。

魅力的なキャラクターたち~行動原理を明確に描く
「キャラクターを考えるときは、このキャラクターはこういうこと言わないなとか、こういう行動はしないよな、というのはすごく気をつけています」(龍) (C)龍幸伸/集英社
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綾瀬 桃
もう1人の主人公。霊媒師の家系に生まれ育った女子高生。宇宙人にさらわれた際に超能力に目覚める。1人称は「ウチ」で、潔くカッコいい。オカルンと行動するうちに、その存在が気になってきて…。「こういう感じだったら、という自分の理想を描いています」(龍)。

オカルン(高倉 健)
W主人公の1人。怪奇現象オタクの高校1年生。ターボババアとの戦いでその力を宿すも金の玉をなくす。いじめからかばってくれた桃を助けるため変身して戦う。「オカルンはカッコいい男に成長していく、本物になっていかないといけないのかなと」(龍)。

ターボババア
オカルンと桃が初めて挑んだ事件の原因で、全国各地で暴れまわっていた近代妖怪。今は力はオカルンに、意識は招き猫の中にある。

白鳥愛羅
高校の人気者。「愛羅は当初、ゲストキャラ的にすぐ退場させようと思ってたんです。話が進むごとにキャラが立っていって、今はけっこう愛着が湧いてます」(龍)。

絵で表現するマンガ家が理想

――龍がマンガ家を目指し始めたのは21歳のとき。バイト先のコンビニでレシートの裏に絵を描いていたところ、店長から「お前絵うまいじゃん。マンガ家になれよ」と言われたのがきっかけだという。

 もともとマンガは好きで子どもの頃から読んでいたんですが、ずっと野球をやっていて、絵は落書きみたいに描いていただけだったんです。でも店長にそう言われて、好きだった『ガンダム』のマンガをボールペンで100ページわーって描いて、『ガンダムエース』(KADOKAWA)に送ったんです。自分で考えた“神風ガンダム”とか幼稚な感じのやつだったんですが(笑)、連絡が来て「絵がうまいからアシスタントに入ってみないか」と。それで曽野由大さんのところに行き、つけペンの使い方からベタの入れ方まで、マンガの描き方を全部教えてもらいました。

 マンガの魅力を「読むと楽しいし、描くことも楽しいしかないです。時間があればいつまでも描いていたい」と言う龍。どんな作品や作家に影響を受けてきたのか。

 『コロコロコミック』(小学館)で『LAMPO』というマンガを描いていた上山徹郎さんにものすごく影響を受けています。あと大友克洋さんの『AKIRA』や皆川亮二さんの『ARMS』といったアクションもの。絵がうまくて、絵で表現している方たちが好きです――説明はできるだけ省き、絵で瞬間的に読者に分かってもらえる、ストレスなく見てもらえるのは、大事にしているところです。理想は、長く愛されるマンガ家になれたらいいな…と。あと、新しい表現を作っていけたら。これは誰もやったことがないだろうなっていうのをどんどんやりたいです。

作品の魅力の1つがアクションシーン。「今はバトルを描いてるときが1番楽しい」と龍。上は1巻のオカルンが変身して桃を助ける場面。現時点での会心の作は、最新4巻収録のネッシーとの決着の回(左)だそう。「カメラワークなど、映画の影響がすごくあると思います。アクションものも濃いドラマも見ますが、昨年のNo.1は『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』です」(龍) (C)龍幸伸/集英社
誰も見たことがない躍動感あふれるアクションシーン
作品の魅力の1つがアクションシーン。「今はバトルを描いてるときが1番楽しい」と龍。上は1巻のオカルンが変身して桃を助ける場面。現時点での会心の作は、最新4巻収録のネッシーとの決着の回(左)だそう。「カメラワークなど、映画の影響がすごくあると思います。アクションものも濃いドラマも見ますが、昨年のNo.1は『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』です」(龍) (C)龍幸伸/集英社
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龍幸伸(たつ・ゆきのぶ) 2010年『月刊少年マガジン』(講談社)で初連載。読み切りを経て昨年4月より『ダンダダン』を『少年ジャンプ+』で連載。『チェンソーマン』藤本タツキや『地獄楽』賀来ゆうじのアシスタントをしていた時期も。「藤本君や賀来さんとは、作品内リアリティー、マジ感みたいなものは大事だよね、とよく話していて、影響を受けてると思います」(龍)。『ダンダダン』のタイトルの意味は内緒とのこと (C)龍幸伸/集英社
龍幸伸(たつ・ゆきのぶ) 2010年『月刊少年マガジン』(講談社)で初連載。読み切りを経て昨年4月より『ダンダダン』を『少年ジャンプ+』で連載。『チェンソーマン』藤本タツキや『地獄楽』賀来ゆうじのアシスタントをしていた時期も。「藤本君や賀来さんとは、作品内リアリティー、マジ感みたいなものは大事だよね、とよく話していて、影響を受けてると思います」(龍)。『ダンダダン』のタイトルの意味は内緒とのこと (C)龍幸伸/集英社
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