※日経エンタテインメント! 2022年5月号(4月4日発売)の記事を再構成
マンガ誌アプリ『少年ジャンプ+』(ブラウザー版もあり/集英社)で昨年12月に始まったマンガ家タイザン5初の連載作品『タコピーの原罪』(連載は3月に終了)が大ヒット。話題沸騰のタイザン5に“5つの質問”に答えてもらった。
宇宙からやってきた幸せな宇宙人タコピーと、出会った少女たちが背負う過酷な日常とその変化を描いていく『タコピーの原罪』。小学生のしずかを主人公に、同級生のまりなや東といったキャラクターたちがそれぞれ抱える家族の問題を浮き彫りにする物語は、痛さと切なさをはらみながら、タコピーの目的の謎とともに多くの読者を引き込んだ。
連載は3月25日に終了。4月4日にはコミックス下巻を発売し、今まさに世の中から大きな注目を集めるマンガ家・タイザン5へのインタビューが実現。『タコピーの原罪』の誕生や作り方、これからについて語ってもらった。
Q1 『タコピーの原罪』はどんなアイデアから生まれたのですか。
A1 最初の時点で担当編集さんに「好きな題材で描くといいですよ」とおっしゃっていただいたのがきっかけです。『ドラえもん』が好きなので、それを若干暗い感じにできないか、というアイデアから描き始めました。明るい話よりも登場人物がちょっと困ったりする話のほうが描きやすいかもと思っていたのと、家庭問題を題材にした作品も好きだったので、その方向にしようかなと思い…また、連載を続けられるような話が思いついていなかったのですが、「ループものなら続けられるのでは」と考え、今のような形になりました。
Q2 ストーリーやキャラクターはどう作っていきましたか?
A2 「幸せな場所から来た宇宙人が現代で困る」という話だったので、最初からタコピーは決まっていました。次に、タコピーは誰かを助けるためにループするので、困ってる女の子=ヒロインのしずかちゃんを出して、いじめっ子のジャイアン的ポジションとしてまりなちゃん。まりなちゃんが死んだ後、しずかちゃんを手助けする冷静な人が東くん…彼は出来杉くんみたいなイメージでした。そういうオマージュ的なところがありました。また、しずかちゃんとまりなちゃんはどちらもタコピーと出会った人ということで、対比させようと思っていました。
最初の打ち合わせのときに最終話までの段取りや内容をなんとなく決めて、それを基に1話ずつのネームを作っていきました。ただ、最後の終わり方は連載開始後に序盤の反応を見て決めようと話していて、結局結末は最初に考えたものとかなり違う形になりました。
Q3 大反響をどう受け止めていますか。また、作品が注目を集めた理由をどう考えていますか。
A3 話題にしていただけるのは非常にうれしいです。たくさんの方にお読みいただけたのは、『少年ジャンプ+』に載せていただけたおかげだと思います。媒体自体が注目されていますし、無料で全話読み返せるので(全話無料は上巻発売前までで、現在はアプリをダウンロード後、初回全話無料)、途中からでも入っていただけるのかなと思いました。また、SNS等で話題にしていただけたのもありがたかったです。コメントでは(マンガ上の)背景にも注目してくださる方がいらっしゃったり。背景を描き込むのは好きだったのですが、細かいところまで見ていただけるんだなとうれしかったです。
予想外だったのは5話の閲覧数が意外と伸びたことでした。一応4話はループが終わるターニングポイントで、5話はつなぎの回のイメージがあったためです。
Q4 『少年ジャンプ+』を選んだ理由は?
A4 注目度が高いことと、あとは自由な雰囲気です。かなりいろいろなジャンルの作品が掲載されてるイメージで、作風が縛られないところが魅力的でした。青年誌も好きなのですが、そういう作風でも載せていただけるかなという期待もありました。またもともと、『SPY×FAMILY』など、普通に読者として楽しませていただいておりました。
Q5 次回作の展望や今後描きたいテーマ、マンガ家として大切にしていることを教えてください。
A5 次はまだ思いついてなくて、野球が好きなので野球を題材にしたものとかいいなと思っていたのですが…勉強不足なのでどうしようかなと考えています。
大事にしていることは難しいですが、今のところ描いたマンガには、ちゃんとした悪役は出ていないかもしれないです。『タコピー』は、“この人のせいで全て悪いことが起こっている”ということはなく、みんなちょっとずついいところと悪いところがある、みたいなイメージでした。そういう作品が好きだったので、自分でもそう描いてるのかなと思っています。