※日経エンタテインメント! 2022年5月号(4月4日発売)の記事を再構成

大ヒット『SPY×FAMILY』をはじめ、各種マンガ賞を受賞しコミックスの売り上げも好調な『怪獣8号』『ダンダダン』、さらに昨年12月~3月の短期連載『タコピーの原罪』が連載作品初の1日250万閲覧を突破するなど、『少年ジャンプ+』がマンガ界の話題を独占。圧倒的物量のオリジナル新作や、新人作家の発掘にも力を入れる。『少年ジャンプ+』の強さの秘密と最新注目作を解説する。

『少年ジャンプ+』の各曜日のトップページ。月曜の『SPY×FAMILY』、火曜の『ダンダダン』、金曜の『タコピーの原罪』(連載は3月25日で終了)と『怪獣8号』が1日100万閲覧を超え。非常にバラエティに富んだ作品群がそろう (C)少年ジャンプ+/集英社
『少年ジャンプ+』の各曜日のトップページ。月曜の『SPY×FAMILY』、火曜の『ダンダダン』、金曜の『タコピーの原罪』(連載は3月25日で終了)と『怪獣8号』が1日100万閲覧を超え。非常にバラエティに富んだ作品群がそろう (C)少年ジャンプ+/集英社
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 連載から読み切りまでオリジナル作品を多数掲載し、『週刊少年ジャンプ』の電子版も購入できるマンガ誌アプリ『少年ジャンプ+』(ブラウザー版もあり/集英社)。第1話から異例の反響を呼び、『少年ジャンプ+』最速で累計発行部数1500万部超え(電子含む)を達成、4月より満を持してテレビアニメ化される『SPY×FAMILY』を筆頭に、20年に『怪獣8号』、昨年~今年は『ダンダダン』が連続してマンガ賞を席巻。名実ともに大ヒット作を次々生み出している。

 アプリのダウンロード数も、LINEマンガ、ピッコマといったプラットホーム型に続き、出版社運営のマンガ誌アプリとして高い人気を誇り、今年3月時点で2000万に迫る勢いだ。実際の利用も、編集部が重視しているというWAU(週間アクティブユーザー数)でブラウザー版(PCでの閲覧)を含めると520万。月ベース(MAU)はブラウザー版を含めると900万にも上る。

「少年ジャンプ+」創刊~ヒットの流れ
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アクティブユーザー数とは、ある期間のうちに1回以上利用したユーザー数のこと。上記の数字は、全てアプリとブラウザー版を合算したもの(3月時点)
アクティブユーザー数とは、ある期間のうちに1回以上利用したユーザー数のこと。上記の数字は、全てアプリとブラウザー版を合算したもの(3月時点)
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 メディア化も怒濤の勢いだ。今年1~3月に『終末のハーレム』が、4月からは前出の『SPY×FAMILY』や『阿波連さんははかれない』が放送。『サマータイムレンダ』は、ディズニープラスでの見放題独占配信と、テレビ放送もスタート。昨年大反響を呼び、第2部が初夏に『週刊少年ジャンプ』から『少年ジャンプ+』に場を移して開始となる『チェンソーマン』も、『呪術廻戦』の制作スタジオMAPPAにより、年内にテレビアニメ化が決まっている。同じく『地獄楽』もMAPPAでアニメ化が発表済みだ。

コールドスリープから主人公が目覚めると、ウイルスによって男性の99.9%が死滅した世界が広がっていた。原作:LINK、作画:宵野コタローにより16年から連載中で、累計発行部数は700万部を突破。3月までテレビアニメが放送された。既刊14巻 (C)LINK・宵野コタロー/集英社
終末のハーレム
コールドスリープから主人公が目覚めると、ウイルスによって男性の99.9%が死滅した世界が広がっていた。原作:LINK、作画:宵野コタローにより16年から連載中で、累計発行部数は700万部を突破。3月までテレビアニメが放送された。既刊14巻 (C)LINK・宵野コタロー/集英社
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 創刊からわずか7年半で破竹の勢いを見せる『少年ジャンプ+』。「『週刊少年ジャンプ』を超えるような媒体を作る」という大目標を掲げて始まったが、その創刊時から携わり、17年からは編集長を務める細野修平氏は、現状をどう見ているのか。「アプリのDL数はもうすぐ2000万。次は1000万WAUを目指したい。そのために、まずは1000万MAUが目標です。ヒット作が生まれれば、全体的なユーザー数、読者は増えていきます」(細野編集長、以下同)。

 『ジャンプ+』には毎週・隔週・毎月・毎日更新の連載作品があり、更新日の午前0時に、最新話が配信される。本誌で行った1年前の細野修平編集長への取材(21年4月号掲載)では、「1日100万閲覧の作品を毎日出したい」と語っていたが、「『SPY×FAMILY』、『怪獣8号』といった100万閲覧を超える作品に、この1年で『ダンダダン』が加わりました。昨年末から3月まで連載した『タコピーの原罪』もものすごい反響がありました。『怪獣8号』と同じ金曜配信だったので、競い合うように閲覧数が上がっていったということかもしれません」と話す。

快進撃の始まりは藤本タツキ

 『ジャンプ+』が多くのユーザーを獲得するに至ったきっかけはどこにあったのか。作品で最初に“1段上がった”と実感したのは、16年春に始まった『ファイアパンチ』と『終末のハーレム』だと言う。

『チェンソーマン』の藤本タツキによる初の連載作品。文明崩壊後の世界を舞台に、炎に焼かれ続ける少年の復讐劇を描く。グロテスクな表現も多いが、その圧倒的センスで多くの読者を獲得した。全8巻 (C)藤本タツキ/集英社
ファイアパンチ
『チェンソーマン』の藤本タツキによる初の連載作品。文明崩壊後の世界を舞台に、炎に焼かれ続ける少年の復讐劇を描く。グロテスクな表現も多いが、その圧倒的センスで多くの読者を獲得した。全8巻 (C)藤本タツキ/集英社
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 「『ファイアパンチ』は藤本タツキ先生の初めての連載作品で、『チェンソーマン』に通じるような、ともすればもっと過激なインパクトがある1話目で、反響は大きかったです。それに『終末のハーレム』が続いて勢いづき、読者も増え手応えを感じました。その次の大きな手応えは、19年に始まった『SPY×FAMILY』です」

 その頃に比べ、マンガアプリ自体が世の中に浸透。「初代編集長が『紙でもデジタルでも、パソコンでもスマートフォンでも、媒体を問わずとにかく読めるというのが1番いいよね』と言っていたのですが、読者が媒体を自由に選んで読める状態になってきたのかなとは感じます」。

 あらゆる媒体でという意味では、コミックスの売り上げでもしっかり結果を残している。『SPY×FAMILY』が9巻で累計1500万部超、『怪獣8号』が6巻で670万部超、『ダンダダン』が4巻120万部超(全て電子書籍含む発行部数)に。しかし、意外にも「実は紙の売り上げはあまり想定していなかった」のだとか。

怪獣が日常を脅かす日本で怪獣専門清掃業の主人公が“怪獣化”。「怪獣8号」として防衛隊に加わる。『ジャンプ+』最速1億閲覧、「次にくるマンガ大賞」1位など。松本直也により20年から連載中。隔週金曜更新。既刊6巻 (C)松本直也 /集英社
怪獣8号
怪獣が日常を脅かす日本で怪獣専門清掃業の主人公が“怪獣化”。「怪獣8号」として防衛隊に加わる。『ジャンプ+』最速1億閲覧、「次にくるマンガ大賞」1位など。松本直也により20年から連載中。隔週金曜更新。既刊6巻 (C)松本直也 /集英社
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 「紙が売れることまでは考えてなくて、『ジャンプ+』にしっかり読者が集まって、多くの人に読まれるのが目標だったんです。そこからアニメなどメディア化して、結果としてコミックスに反映されるみたいなイメージだったので、『SPY×FAMILY』が紙で初版100万部を売るようなことになるとは想像していませんでした。デジタルで読むからこそ、紙でも読みたいという人がいるのは発見でした。紙の雑誌の場合でも雑誌で読んだ上でコミックスを買ってくださる方はたくさんいますから、そこは同じなんだなと」

 収益面でも『ジャンプ+』事業全体でコミックスの売り上げが占める比率は加速度的に増えている。「始めて数年は完全にデジタルが主体でしたが、今はコミックスも非常に大きくなっていて、ヒット作のおかげだなと思っています」

[文中の数字は2022年3月時点]

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細野修平(ほその・しゅうへい)
1976年生まれ、三重県出身。2000年集英社に入社。『月刊少年ジャンプ』『ジャンプSQ.』『週刊少年ジャンプ』編集部を経て、14年の創刊から『少年ジャンプ+』の副編集長を務め、17年編集長に就任。主な担当作品は『テガミバチ』『終わりのセラフ』など