※日経エンタテインメント! 2022年5月号の記事を再構成

『テニミュ』を皮切りに様々な2.5次元舞台人気作を世に送り出してきた「ジャンプ」作品。今年は特に『呪術廻戦』の初舞台化が控えるなど、注目度が高い。

ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学(せいがく)vs不動峰
ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学(せいがく)vs不動峰
今牧輝琉が現青学(せいがく)・越前リョーマを務めるミュージカル『新テニスの王子様』The Second Stageを今年1、2月に公演。また最新公演ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青せい学がくvs聖ルドルフ・山吹も決定している (C)許斐 剛/集英社・テニミュ製作委員会

 『週刊少年ジャンプ』作品は、マンガ原作の2.5次元舞台の礎を築いてきたといえる。2003年に初めてミュージカル化された『テニスの王子様』は、累計動員数が300万人を超えるロングヒットシリーズに。『NARUTO-ナルト-』『ハイキュー!!』『僕のヒーローアカデミア』の舞台もシリーズとして上演される人気コンテンツだ。「舞台化は、常に迷い悩みつつ一進一退で進化してきました。そうしたなかで、ミュージカル『テニスの王子様』が最初に道を大きく切り開いたのは間違いないと思います」とは『週刊少年ジャンプ』の中野博之編集長。

 「1999年から開催している『ジャンプフェスタ』では、もともと協賛メーカーのブースで、01~03年に『ONE PIECE』、02年に『NARUTO-ナルト-』、04年に『BLEACH』で、俳優さんがお客さんの前で作品のキャラクターを演じるステージを行ってはいたんです。ただやっぱり当時のジャンプマンガは例えば他誌と比べてもファンタジー要素の強いキャラが多かったので、“ジャンプマンガは舞台化できない”ということを編集部としても誇りに思っていた部分がありました。

 でもミュージカル『テニスの王子様』の完成度の高さや商業的な成功で、その意識が変わっていった。僕も『ROCK MUSICAL BLEACH』の初演(05年)に携わらせていただいたときに新しい気づきやファン層の広がり、カンパニーのみなさんの熱量を感じて2.5次元舞台が大好きになりました」(中野編集長、以下同)

※初年などエポックとなった作品を記載
※初年などエポックとなった作品を記載

 さらに「「ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」が始まった15年ぐらいから、CGやプロジェクションマッピングなどの技術が進化したのもかなり大きい」と話す。「「バクマン。」THE STAGE(21年)などは最初どうやって舞台化するんだろうと思いましたけど、「ハイキュー!!」や『東京2020パラリンピック』開会式も手掛けられたウォーリー木下さんの演出がすごくて。あそこまでしっかり世界観を再現されると、アイデアと腕次第で何でもできると確信したほどでした」

ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“頂の景色・2”
ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“頂の景色・2”
「プロジェクションマッピングのハードルがいい意味で下がりました」(中野編集長)。Blu-ray&DVDシリーズ発売中 (C)古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会
『ワールドトリガー the Stage』
『ワールドトリガー the Stage』
「『ワールドトリガー』はキャラそれぞれの個性と葦原大介先生の生み出すセリフ1つひとつがとてもキレているので、2.5次元化にピッタリだと思いました」(中野編集長)。「大規模侵攻編」が東京・京都にて8月上演 (C)葦原大介/集英社 (C)『ワールドトリガー the Stage』製作委員会
「バクマン。」THE STAGE
「バクマン。」THE STAGE
マンガ家を目指す青年たちの物語で、舞台では水の演出が多用された。「水ってマンガ原稿の近くに1番置いておいてほしくないものですが(笑)、それで演出するんだとビックリしましたし、それが本当に効果的で、とても面白かったです」(中野編集長)。Blu-ray&DVD発売中 (C)大場つぐみ・小畑健/集英社・「バクマン。」THE STAGE製作委員会 (C)大場つぐみ・小畑健/集英社

作家、編集部も関わる

 また近年の2.5次元舞台のクオリティーの高さには、制作体制の変化も関係していると言う。「ここ5年、10年ほどはアニメーション制作などほぼ全てのメディア化に担当編集や作家さん本人がしっかりと関わっています。2.5次元でいうとまず企画の段階から、1つの公演でどこまでのストーリーをやるのか、脚本のチェック、担当はもちろん、先生によってはキャストオーディションにも参加されています。なかでも1番こだわられるのは、脚本。僕らはどうしても作品ファンの方に目を向けますので『あ、このキャラの解釈が違ったな』となられるのが1番つらい。そうならないためにも脚本段階での先生とのラリーが1番多く、そうすることでより良いものができるのではと思います」。

 『呪術廻戦』も舞台化、最旬作の2.5次元化にも注目が集まる。

 「まだまだ未発表の作品もありますので、ぜひ楽しみにしていただければと。あと我々の新しい挑戦としては、夏と冬に控える『鬼滅の刃』の能狂言もあります。これまでに歌舞伎は『ONE PIECE』『NARUTO-ナルト-』で経験してきましたが、能狂言は未知の世界。現在みなさんと一緒に鋭意制作中ですので、そこも期待していただきたいです」

大ヒット作の舞台が上演

【初舞台化】舞台「呪術廻戦」
【初舞台化】舞台「呪術廻戦」
現在連載中で、劇場版が興収130億円(3月21日時点)を突破した『呪術廻戦』も初舞台化。7、8月東京・大阪にて上演  (C)芥見下々/集英社 (C)芥見下々/集英社・舞台「呪術廻戦」製作委員会
舞台「鬼滅の刃」其ノ参 無限夢列車
舞台「鬼滅の刃」其ノ参 無限夢列車
累計発行部数1億5000万部(デジタル版含む)を突破した『鬼滅の刃』を舞台化した舞台「鬼滅の刃」の最新作『其ノ参 無限夢列車』が、今年9~10月に東京・京都で公演。さらに今夏に野村萬斎の演出・出演で能狂言になる (C)吾峠呼世晴/集英社 (C)舞台「鬼滅の刃」製作委員会
中野博之(なかの・ひろゆき)
1977年生まれ、福井県出身。2000年に集英社に入社し、『週刊少年ジャンプ』編集に。『BLEACH』『魔人探偵脳噛ネウロ』『トリコ』などを担当。17年より同誌編集長を務める

(文/松木智恵)

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