※日経エンタテインメント! 2022年5月号の記事を再構成
『テニミュ』を皮切りに様々な2.5次元舞台人気作を世に送り出してきた「ジャンプ」作品。今年は特に『呪術廻戦』の初舞台化が控えるなど、注目度が高い。
『週刊少年ジャンプ』作品は、マンガ原作の2.5次元舞台の礎を築いてきたといえる。2003年に初めてミュージカル化された『テニスの王子様』は、累計動員数が300万人を超えるロングヒットシリーズに。『NARUTO-ナルト-』や『ハイキュー!!』、『僕のヒーローアカデミア』の舞台もシリーズとして上演される人気コンテンツだ。「舞台化は、常に迷い悩みつつ一進一退で進化してきました。そうしたなかで、ミュージカル『テニスの王子様』が最初に道を大きく切り開いたのは間違いないと思います」とは『週刊少年ジャンプ』の中野博之編集長。
「1999年から開催している『ジャンプフェスタ』では、もともと協賛メーカーのブースで、01~03年に『ONE PIECE』、02年に『NARUTO-ナルト-』、04年に『BLEACH』で、俳優さんがお客さんの前で作品のキャラクターを演じるステージを行ってはいたんです。ただやっぱり当時のジャンプマンガは例えば他誌と比べてもファンタジー要素の強いキャラが多かったので、“ジャンプマンガは舞台化できない”ということを編集部としても誇りに思っていた部分がありました。
でもミュージカル『テニスの王子様』の完成度の高さや商業的な成功で、その意識が変わっていった。僕も『ROCK MUSICAL BLEACH』の初演(05年)に携わらせていただいたときに新しい気づきやファン層の広がり、カンパニーのみなさんの熱量を感じて2.5次元舞台が大好きになりました」(中野編集長、以下同)
さらに「「ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」が始まった15年ぐらいから、CGやプロジェクションマッピングなどの技術が進化したのもかなり大きい」と話す。「「バクマン。」THE STAGE(21年)などは最初どうやって舞台化するんだろうと思いましたけど、「ハイキュー!!」や『東京2020パラリンピック』開会式も手掛けられたウォーリー木下さんの演出がすごくて。あそこまでしっかり世界観を再現されると、アイデアと腕次第で何でもできると確信したほどでした」
作家、編集部も関わる
また近年の2.5次元舞台のクオリティーの高さには、制作体制の変化も関係していると言う。「ここ5年、10年ほどはアニメーション制作などほぼ全てのメディア化に担当編集や作家さん本人がしっかりと関わっています。2.5次元でいうとまず企画の段階から、1つの公演でどこまでのストーリーをやるのか、脚本のチェック、担当はもちろん、先生によってはキャストオーディションにも参加されています。なかでも1番こだわられるのは、脚本。僕らはどうしても作品ファンの方に目を向けますので『あ、このキャラの解釈が違ったな』となられるのが1番つらい。そうならないためにも脚本段階での先生とのラリーが1番多く、そうすることでより良いものができるのではと思います」。
『呪術廻戦』も舞台化、最旬作の2.5次元化にも注目が集まる。
「まだまだ未発表の作品もありますので、ぜひ楽しみにしていただければと。あと我々の新しい挑戦としては、夏と冬に控える『鬼滅の刃』の能狂言もあります。これまでに歌舞伎は『ONE PIECE』『NARUTO-ナルト-』で経験してきましたが、能狂言は未知の世界。現在みなさんと一緒に鋭意制作中ですので、そこも期待していただきたいです」
大ヒット作の舞台が上演
(文/松木智恵)