※日経エンタテインメント! 2022年5月号(4月4日発売)の記事を再構成
2019年にミュージカル『刀剣乱舞』 ~葵咲本紀~で、初めて2.5次元ミュージカル作品に出演した新星・岡宮来夢が、「2.5Dアワード」の俳優部門を受賞。柔らかな表情のなかに芯の強さを感じる岡宮に今回の受賞について、また今後の展望を聞いた。
――20万人を超える日本2.5次元ミュージカル協会が運営する公式メルマガ会員「2.5フレンズ」が選んだ「2.5Dアワード」の俳優部門を受賞したのは岡宮来夢。2015年の「第28回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」を機に芸能界入りし、19年のミュージカル『刀剣乱舞』 ~葵咲本紀~の鶴丸国永役で、2.5次元ミュージカル作品に初参加。昨年9~11月に出演したミュージカル『刀剣乱舞』 ~静かの海のパライソ~が爆発的な人気を呼び、同作は同アワードの作品部門も受賞した。
受賞の知らせを聞いたときは、ビックリしました。まだまだ新人で何もできない僕でいいのだろうかと思いましたが、うれしい気持ちも本当に大きいです。
ミュージカル『刀剣乱舞』 ~静かの海のパライソ~は、20年の公演が途中で中止になり、去年改めて上演することができました。『刀ミュ』は、もともと2.5次元作品のなかでもすごく注目度の高いシリーズ。それは本当に素敵な先輩方がここまで素晴らしい作品をずっと築き上げられてきたからこそで、その座組に新しく入っていく僕らのような若手は、やっぱり「下手なものは作れない」とものすごく大きなプレッシャーを感じていました。演出の茅野(イサム)さんに、20年の稽古の頃から「これは伝説的な公演になるぞ」と言われ、21年の(稽古の)ときには僕が「これは絶対に伝説になりますよね」と言ったら、茅野さんが「お前がするんだよ」と。物語の内容はつらくて苦しいものですが、随所に心震える愛がある。刀剣男士たちも懸命に戦っているんだって。コロナ禍だからこそ、響いたものがあると思います。だから、今回こういった賞をいただけたのは、すごく光栄です。
僕が2.5次元ミュージカルに携わらせてもらうきっかけになったのが『刀ミュ』であり鶴丸国永なので、感謝してもしきれないです。今年の夏には、『鶴丸国永 大倶利伽羅 双騎出陣』の公演が控えています。どんな作品となり演出がつくのか。『刀ミュ』は、僕の中では既に“帰ってくる場所”で、漢(おとこ)として本当にたくさんのことを教えてもらえる場ですから…ここはあえて、「漢」という字で言わせていただきます(笑)。プレッシャーはとんでもないですが、(大倶利伽羅役の牧島)輝君と手を取り合って頑張ろうと思います。
いつか帝国劇場に立つ
――小学生の頃に見たドラマ『ごくせん(第3シリーズ)』(08年、日テレ系)での三浦春馬の演技に魅了され、その後、プロ野球選手への夢に挫折したこともきっかけになって、この世界へ。『葵咲本紀』で初めて舞台の上に立ったときは「解き放たれた感覚になった」と言う。
それまで人前で歌うこともあまりなかったですし、ミュージカル自体にもほとんど触れたことがなくて。けれど舞台に立ってお客さんからカーテンコールで拍手をもらったときに「あぁ、伝わったんだ…!」と。『刀ミュ』で鶴丸国永役に選んでいただけたことは、僕の人生にとって本当に大きなターニングポイントになりました。
あと僕が昨年出させていただいた作品では「BANANA FISH」The Stage(21、22年)。この作品で、かつて下積み時代を共にした水江建太君とW主演をやらせていただけて。「俺、こんだけできるようになったぜ!」じゃないですけど(笑)、建太と互いに成長した自分でお芝居が作り上げられたというのも、僕にとってはものすごく大きなことでした。
――最近はその歌唱力にも注目され、昨年は『きみはいい人、チャーリーブラウン』『王家の紋章』など様々なミュージカル作品にも出演を果たしている。
「いつか帝国劇場に立つ」というのを目標の1つにさせていただいていたので、『王家の紋章』でそれがかなってうれしかったです。すご過ぎる先輩方を前にして稽古終わりには毎日トボトボと帰ってはいたんですけど(笑)。でもメンフィス役の浦井健治さんは「来夢を見ていれば、これまでどれだけ大変な場所で自分を高めてきたのかが分かる」ということを言っていただいて。あと「来夢はいずれ帝劇を背負う」とも言ってくださったんです。実際に帝劇を背負っている方からそんなことを言ってもらえるなんて! と感動しました。もう思い出すだけで胸がいっぱいになります。そこからは「いつか帝劇の0番に主演として立つ」のが、新たな目標の1つになりました。
2.5次元作品は僕の原点の場所。これからもずっと携わらせていただきたいです。と同時に、垣根を越えた様々な舞台作品にも挑んでいきたくて。『刀ミュ』で音楽番組に出させていただいたときに思ったのですが、2.5次元の役者って本当に意識が高くて、キャラクターを表現するだけでなく、3次元の人間が演じるからこその、魅力を掛け合わせている。(『王家の紋章』で共演した)新妻聖子さんは初めて見た2.5次元作品が『静かの海のパライソ』だったそうですが、面白かったとすごく喜んでくださって。僕は、役者をやらせてもらっている以上は唯一無二の存在でありたい。カーテンコールで拍手をいただき、目の前が開けていくのが本当に好きなので、舞台に注力して…生意気なんですけど、(2.5次元とグランドミュージカルと)双方で自分の底力を上げて、どちらにも還元できるようになれたらと思っています。
A わかめと長ネギ。
Q 最近良かったエンタメは?
A 映画『ディア・エヴァン・ハンセン』。大好きな映画『グレイテスト・ショーマン』と同じ製作チームで、楽曲ももともと聴いていたので。すごく胸に刺さりました。
Q 最近よく聴いているアーティストは?
A Da-iCE。花村想太君と仲良くさせてもらっていて、特に『Promise』という曲が好きでよく聴いています。
Q 影響を受けた俳優やアーティストは?
A やっぱり三浦春馬君。かなうなら、いつかブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』に挑んでみたいです。
Q 座右の銘は?
A 謙虚と感謝。小さい頃から両親に言われてきたので、これだけはずっと持ち続けていきたいと思っています。
(文/松木智恵 写真/藤本和史 スタイリスト/ホカリキュウ ヘアメイク/AKi)