
白馬への集客力を急上昇させ、岩岳リゾート快進撃の足がかりをつくったヒットアトラクションと言えば、「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR(白馬マウンテンハーバー)」と「ヤッホー!スウィング presented by にゃんこ大戦争」だ。建築や製作に関わったクリエイターたちの目には、同社の和田寛社長はどのように映ったのか。「2大ヒット誕生」の舞台裏を探った。
「一緒に考えさせてほしい」から始まった
「白馬の特徴は、周りにある3000メートル級の山々。いわゆるハイキングではなく、プロフェッショナルなアルピニストが歩く山は北海道にはない。通年でグローバルに対しても通用する山は、日本ではここだけではないか」と白馬の魅力について語るのは、建築家で遠藤建築アトリエ(札幌市)代表の遠藤謙一良氏。「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR(白馬マウンテンハーバー)」の設計者だ。
白馬マウンテンハーバーは2018年10月に開業した、白馬の山並みを一望できる展望テラス。開業前の17年、白馬岩岳マウンテンリゾートのグリーンシーズンの来場者数は2万9000人だったが、これができたことによって翌18年は一気に6万人と倍増。さらに19年は他の施策投入も後押しして13万人まで跳ね上がった。白馬の絶景を最高に満喫できる、まさに同リゾートを代表する集客施設だ。
遠藤氏がスノーリゾート開発に関わるようになったのは約15年前。北海道ニセコのスキー場で、ロッジ(宿泊施設)の設計を手掛けたのがきっかけだ。白馬との縁については、以前からこの地でコンドミニアムを設計していた関係から、地元の事業者を集めたパーティーに参加する機会があった。
和田社長とはそのときに出会った。その段階では、まだ具体的なプランは決まっていなかったが、和田社長は「山の上に展望台をつくりたい」と遠藤氏に伝えた。
遠藤氏が仕事を引き受ける際の大きな判断基準は、「ものづくりの人間なので、『面白いことができそうだ』と根底から思えたとき」(遠藤氏)。そう思えるほどの情熱を、和田社長から感じ取った。活動拠点が北海道なので、降雪量の多い白馬で発生する雪の処理問題などに対応できる自信もあった。契約を結ぶまでもなく「まずは一緒に考えさせてください」と言って、遠藤氏と和田社長のプロジェクトはスタートした。
建築は「素人でも慣れてくる」のが面白い
「どうしたら、あの景観を生かして価値を創造できるか」と、チームでブレストしてスケッチを重ねた。ただ、「形が見えてくるまで何をすべきか見えていないので、生み出す苦しさがあった」と遠藤氏。設計を始めた段階は展望台の向きは全く決まっておらず、議論が続いた。和田社長も世界のリゾート地、景観を楽しむ空間の事例について色々情報を調べ、アイデアを出した。
ただ、ビジュアル的には白馬三山がベストだという認識は誰もが抱いていた。「森を抜けて、ひゅっと施設に入っていく感覚と景観がつながるには、白馬三山に向くしかなかった」(遠藤氏)。実際に白馬マウンテンハーバーを訪れ展望テラスに出ると、白馬岳をセンターにして向き合う「このポジションしかないだろう」と思える。だが、そこに落ち着くまでには相当な紆余曲折(うよきょくせつ)があったようだ。
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