白馬の挑戦 元官僚社長の熱血マーケティング 第2回

白馬の絶景という“眠れる至宝”を観光資源として活用し、マーケティング展開するにはどうしたらいいのか。長野県白馬村の岩岳リゾートでは、積極的に「外の視点」を取り入れて、唯一無二のコンテンツに育て上げた。第2回は自身も「外」からやって来た同社の和田寛社長が、白馬エリアを“商品化”するマーケティングの極意、外からの視点を生かした景観価値の高め方について見ていく。

「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR(白馬マウンテンハーバー)」へと続く橋。あの入り口を抜けるとどんな絶景が待っているのかと胸が高鳴る。施設内の「THE CITY BAKERY (ザ・シティ・ベーカリー)」は信州では初出店
「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR(白馬マウンテンハーバー)」へと続く橋。あの入り口を抜けるとどんな絶景が待っているのかと胸が高鳴る。施設内の「THE CITY BAKERY(ザ・シティ・ベーカリー)」は信州では初出店

「絶景」は観光資源になる

 首都圏からのアクセスを考えた場合、白馬村の立地は決して有利とは言えない。JR東京駅から北陸新幹線でJR長野駅に向かい、そこからバスでJR白馬駅に到着するには、乗り換え時間などを含めれば3時間程度。JR新宿駅から特急あずさ3号に乗ると、JR白馬駅まで乗り替えなしで来られるが、こちらは4時間近くかかる。自動車でも、長野自動車道の安曇野インターや長野インターを降りてから最低でも1時間は見ておきたい。

 しかし、白馬村に足を踏み入れると、目の前に広がるのは北米や欧州の山々を思わせる風景だ。むしろ、気軽に日帰りできないような場所だからこそ、1泊2日どころか2泊以上の長期滞在を前提とした「マウンテンリゾート」の価値が高まるのではないか――。岩岳リゾートの和田寛社長は逆転の発想で構想を練った。

 そうして生まれた強力な“集客装置”の第1弾が、2018年10月にオープンした「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR(白馬マウンテンハーバー)」だ。白馬三山(白馬岳、杓子岳、白馬鑓ヶ岳)を一望できる絶景を眺めながら、都会でも人気の高いベーカリーブランド「THE CITY BAKERY(ザ・シティ・ベーカリー)」のサンドイッチやドリンクで、ぜいたくなひとときを満喫できる展望テラスである。

 和田社長は白馬村で働き始めてから地元の人たちと話してみると、意外な事実に気づいた。実は白馬村の人々も、岩岳の山頂から見える白馬の山並みがもたらす景観の素晴らしさを理解していたのである。「ポテンシャルがある」と感じていたのは和田社長だけではない。地元の人々もまた、白馬岩岳にはスキー場以外の“お宝”があることを肌で感じていた。

 それにもかかわらず、村の人々はその景観を活用できていなかった。その理由を和田社長はこう分析する。

 「1990年代までは冬のスキー客や登山客で十分稼げていたので、特に一般観光客を呼び続ける必要はなかった。2000年代に入るとスキー場バブルが崩壊した。逆に資金的な余裕がなくなり、本当は『やりたい』と思っていても投資ができる状況ではなくなった」

標高1289メートルの岩岳の山頂。景観の良さを集客に結び付けられていなかった
標高1289メートルの岩岳の山頂。景観の良さを集客に結び付けられていなかった

「海水浴場」と「ビーチリゾート」は同義ではない

 地元の人たちの認識から「やはり、この景観にはポテンシャルがある」と確信した和田社長は、まずは「外」からやって来た自分自身が面白いと思うものを取り込み、それらを景観と組み合わせることで、白馬エリアの「外」へ向けた新たな観光資源に発展させようと考えた。

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