「LINEのマーケティング活用」新常識 第7回

「LINE」を企業が活用する際に、頭を悩ませるのが「ブロック(配信停止)」のしやすさだ。ボタン1つでブロックできるため、登録者から不要と思われないメッセージ配信設計が必須になる。このブロック率を抑制する手段の1つとして、LINEで使える独自機能の開発が挙げられる。メガネ・コンタクトレンズのブランド「JINS」を展開するジンズは、LINEを通じたメッセージ配信だけでなく、独自機能を加えることで利便性を高めてブロック率を抑制しながらメッセージ配信に取り組んでいる。

メガネ・コンタクトレンズのブランド「JINS」を展開するジンズホールディングスは、独自機能を盛り込んだ「LINE公式アカウント」の活用に力を入れる
メガネ・コンタクトレンズのブランド「JINS」を展開するジンズは、独自機能を盛り込んだ「LINE公式アカウント」の活用に力を入れる

 「これまでに登録したLINE公式アカウントをブロック(配信停止)したことはあるか」という質問に、68%が「ある」と回答したー―。

 チャットボットの活用支援会社モビルス(東京・品川)が2022年3月に実施した消費者のLINE公式アカウント利用実態調査では、こんな結果が出た。LINE公式アカウントはボタン1つで気軽に登録できる半面、ブロックもボタン1つでできる。ブロックされてしまうと、メッセージは届かなくなる。せっかく広告費や販促費をかけて登録者を集めても、ブロック率が高水準化するとその努力も水の泡になる。

これまでに登録したLINE公式アカウントをブロック(配信停止)したことはあるか
これまでに登録したLINE公式アカウントをブロック(配信停止)したことはあるか モビルス(東京・品川)が全国の20~60歳以上の男女4415人を対象に2022年3月15日から26日にかけて、インターネット調査を実施。有効回答数は661件
モビルス(東京・品川)が全国の20~60歳以上の男女4415人を対象に2022年3月15日から26日にかけて、インターネット調査を実施。有効回答数は661件

 このように手軽にブロックされるため、LINE公式アカウント活用企業にとって、ブロック率は頭痛の種になっている。これを抑制する手段の1つが独自機能の開発だ。LINE公式アカウントは高機能化が進み、双方向性を生かしてメッセージ上で特定の手続きを受け付けたり、スマートフォン向けアプリのような機能を提供したりできるようになっている。例えば、ヤマト運輸のLINE公式アカウントでは、メッセージ上で配達時間の指定や再配達の依頼ができるといった具合だ。

 このような機能があると、登録者が利便性を感じている限りはブロックはされにくい。つまり、LINE公式アカウントを単なるメッセージ配信のツールと捉えるのではなく、商品、サービス、買い物体験の向上につながる利便性を併せて提供できるプラットフォームとして活用することが、ブロックされにくいアカウントになる秘訣だ。

 そうした、LINE上で提供する独自機能の開発に力を入れる1社がジンズだ。スマホ向けアプリで好評の機能や、LINEの双方向性を生かした機能を搭載することで、ブロック率を抑制している。

他社に先駆けて開設したものの、使いこなせず

 ジンズのLINE公式アカウント開設は12年まで遡る。LINEが企業向けにアカウントを提供し始めた初期から利用している“古参”企業だ。ところが、「メールマガジンの代替手段としてしか捉えていなかった。効果計測もしておらず、十分に活用しきれていなかった」とEW事業本部DC営業部EC推進Gの濱田卓男グループリーダーは振り返る。

 LINE公式アカウントを活用しきれていなかったのは、機能面にもその理由がある。提供開始当初のLINE公式アカウントは、集めた登録者に同じメッセージを一斉配信で送ることしかできなかった。「LINEのベースの機能が弱かったので、メルマガの代替ツールとしてしか使えなかった」とコミュニケーション本部コミュニケーション部デジタルプロモーション室の澤田栄一ディレクターは言う。ただ、LINE公式アカウントが進化し、高機能化することで「活用の幅が広がってきた。そこで、活用方針を見直したうえで投資し始めた」(澤田氏)。

 新たな活用方針では、まずLINE公式アカウントの位置付けを改めた。ジンズはスマホ向けアプリを提供している。アプリはデザイン面や機能性でブランドの世界観などを表しやすいが、顧客にダウンロードしてもらうハードルが高い。日ごろからジンズのアプリを利用する層は、かなりロイヤルティーが高い顧客だ。

「機能開発」「登録促進」「広告運用」の3つで強化

 そこで、アプリを優良顧客向け、LINE公式アカウントは見込み客や手軽にジンズのサービスを利用したいライトな顧客向けと役割分担を明確化した。方針を改めたうえで、「機能開発」「登録促進」「広告運用」の3つの取り組みでLINE公式アカウントの活用を強化している。各取り組みについて、順を追って説明しよう。

ジンズは「機能開発」「登録促進」「広告運用」の3つの取り組みでLINE公式アカウントの活用を強化している
ジンズは「機能開発」「登録促進」「広告運用」の3つの取り組みでLINE公式アカウントの活用を強化している

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