
従来は企業がLINE上に開設する公式アカウントに大量の「友だち」を集め、一斉にメッセージを配信するマスメディア的な活用法がLINEマーケティングでは一般的だった。しかし、そうした活用法は過去のもの。メッセージ配信や広告活用でも、LINEならではの新常識が生まれている。第1回では5つの新常識のうち2つについて解説した。特集の第2回では残る3つを学んでいこう。
企業がLINE上にアカウントを開設して、登録者にメッセージを配信できるマーケティングサービス「LINE公式アカウント」。同サービスは提供が開始された当初、登録者に同じメッセージを一斉に配信することしかできなかった。そのため大量の友だちを集め、一斉配信で一方的に情報を送るマス広告的な活用法が一般的だった。グローバルサービスのLINEならではの強力なインフラを使い、数百万件の配信対象者に一気にメッセージを届けられる。ここが、サーバー負荷を考慮して、段階的に送るメールマーケティングとの大きな違いだった。
だが、そうした活用法を続けていては、登録者から自分にとって関係がない情報ばかり届くアカウントとみなされて、「ブロック率」は高まる一方だ。LINEは登録者が不要と判断すれば、ボタン1つでブロック(配信停止)できる。企業によってはブロック率が5割を超えるケースもあるといわれる。せっかく多額の広告費を投じて友だちを集めても、実際にメッセージを届けられるのは半分以下では金をどぶに捨てるようなものだ。そこで、ブロックされないためにも、3つ目の新常識「メッセージの一斉配信をしない」ことを目指す必要がある。
現在のLINE公式アカウントは1つのアカウントでさまざまな機能が使える。その1つがメッセージ配信の出し分けだ。利用企業がLINE経由でデータを取得していなくても、LINE関連サービスの利用者が登録した性別、年代、エリア情報、サービス内での行動履歴、LINE内コンテンツの閲覧傾向、LINE内の広告接触情報を基に分類した「みなし属性」を利用して、対象を絞って配信できる機能も備わっている。
自社の会員IDとLINEのユーザーIDを連係させれば、顧客データに基づくメッセージの出し分けも可能だ。LINE執行役員広告・法人事業担当の池端由基氏は「ワン・トゥ・ワンのパーソナライズしたコミュニケーションは付加価値だったが、これからはそれが当たり前になっていく。ワン・トゥ・ワンのコミュニケーションを前提とした、付加価値を考えていくことが必要だ」と強調する。
5つのステップでメッセージ配信
実際、LINE専門のマーケティング支援会社DOTZ(ダッツ、東京・新宿)の稲益仁社長は「当社がLINE活用を支援する企業は、一斉配信はほとんどやらない。配信したとしても、せいぜい月1回だ」と明かす。
ただし、「顧客ごとにメッセージをカスタマイズする」というわけではない点には、ご留意いただきたい。すべてのメッセージをカスタマイズしていては、金と時間がいくらあっても足りない。重要なのは顧客のカスタマージャーニーを捉え、適切なメッセージを届けられるコミュニケーション設計だ。その設計方法では、稲益氏が提案する「5つのステップ」が参考になる。以下がそのステップとなる。
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