オンライン接客 vs リアル接客 第4回

「MOUSSY(マウジー)」「SLY(スライ)」など、21の人気ファッションブランドを擁するバロックジャパンリミテッド。2021年、バニッシュ・スタンダード(東京・渋谷)が主催した企業対抗オンライン接客大会では、同社スタッフが1位、2位を独占した。定評がある接客力を生かし、全国に1500人ほどいる店舗スタッフによるオンライン接客に力を入れている。

 2021年8月に行われた、企業対抗のオンライン接客大会「STAFF OF THE YEAR(スタッフ・オブ・ザ・イヤー)」。同大会で全国7万人の頂点に立ったのは、バロックジャパンリミテッド(以下、バロックジャパン)所属の店舗スタッフだ。

 バロックジャパンの22年2月期のEC売上高は、前年同期比10.6%増の104億3500万円。好調なEC売り上げの背景には、店舗スタッフによるライブコマースやSNSを通じたオンライン接客がある。ライブコマースは、30分ほどの配信で同日の店頭売り上げを上回ることもある。

 こうした実績を鑑みて、バロックジャパンでは、店舗スタッフによるオンライン接客を強化している。スタッフ・オブ・ザ・イヤー初代優勝者で、現在は販売部に所属し、店舗スタッフ向けのSNS接客教育などを行っている村岡美里氏(受賞当時は、rienda福岡ソラリアプラザ店に所属)に、バロックジャパンが実践するオンライン接客や、リアル接客との相乗効果を図るポイントを聞いた。

リアル接客にはない、オンライン接客ならではのメリット

 バロックジャパンは、OMO(Online Merges with Offline、オンラインとオフラインの融合)戦略を強化しており、そのキーワードとして「WEB接客(ビデオ接客)」「ライブコマース」「LINE配信メッセージ(LINE接客)」の3つを掲げている。

 ブランドや商品を案内するコミュニケーションツールの1つとしてスタートしたビデオ接客は、オンラインで予約申し込みを受け付け、店舗スタッフが1対1で45分間、画面越しに接客を行うというもの。22年4月11日に開始し、5月現在は15店舗で実験的に取り組んでいる。将来的には、ビデオ接客による売り上げ貢献度合いを可視化し、店舗評価につなげる仕組みの構築を検討しているという。

 接客を希望する客は、ECサイト上の予約フォームから店舗と日時を指定し、個人情報と、当日紹介を希望する商品がある場合には商品名などを記入する。ビデオ接客には、ギブリー(東京・渋谷)が提供する専用ツール「Virtual Store」を活用している。

店頭でビデオ接客中の村岡氏。村岡氏は、「店舗にオンライン接客しているスタッフとリアル接客しているスタッフがいるという状況を作りたい」と話す。そのため一部店舗ではiPadの裏側に「オンライン接客中」という張り紙をし、オンライン接客中であると一目で分かるようにしているという
店頭でビデオ接客中の村岡氏。村岡氏は、「店舗にオンライン接客しているスタッフとリアル接客しているスタッフがいるという状況をつくりたい」と話す。そのため一部店舗ではiPadの裏側に「オンライン接客中」という張り紙をし、オンライン接客中であると一目で分かるようにしているという

 店舗スタッフは、接客終了後、45分間の接客中に案内した商品ページのURLを送ったり、店頭に取り置きをしたりという形で、オンライン、オフライン双方での販売につなげている。客とのやり取りには、LINEとバニッシュ・スタンダードが共同開発した、LINE接客に最適化されたサービス「LINE STAFF START(ラインスタッフスタート)」を活用。店舗ごとにアカウントを開設している。現状は15店舗でのみ運用を行っているが、すでにLINE STAFF STARTを通じた売り上げも発生しているため、今後はLINE接客にも注力していく。

 ビデオ接客を利用する客はさまざまだ。近隣に店舗がないがECだけでは自身に合うサイズが分からないため、直接店舗スタッフに聞きながら不安を解消したいという人もいれば、SNSで店舗スタッフのファンになり直接接客を受けてみたいという人もいる。

 村岡氏はビデオ接客について、店舗スタッフと客の双方にメリットがあると話す。なぜなら予約制をとっていることから店舗スタッフは「事前準備」ができるため、画面越しであっても質の高い接客を提供できるからだ。またクローゼットの中を見せてもらい、客が持っている洋服に合わせて商品提案をするなど、自宅と実店舗をつなぐからこそ新たな接客の可能性も広がる。

 「予約申込時に、何のパンツの何インチに関して接客を受けたいなどと詳細を書いくださるお客様も多い。リアル接客の場合は、ふらっと入ってきたお客様に対してゼロからニーズを引き出す必要があるが、ビデオ接客の場合はあらかじめ何を探しているかヒアリングが終了している状態で接客を開始できる。そのためスタッフ側も準備がしやすい」(村岡氏)

 また、店舗スタッフと客の間のコミュニケーションも円滑になる。例えば、長年ブランドを愛用している顧客は、何年も前に購入した商品を所有している場合がある。その洋服と合わせたコーディネート提案をしてほしいなど、なんらかの形でそれがどの商品か店舗スタッフに伝えようとしても、店頭だと、「昔購入した緑色のスカートで……」などと限られた情報になりがちで、該当商品にたどりつけないこともある。一方自宅であれば、その商品を直接画面の前まで持ってきてもらうことができる。

 「ビデオ接客であれば、『今回ご紹介している商品は、持ってきていただいたそちらのスカートと同じサイズです』などとスムーズに進むだけでなく、密度の濃い接客が可能になる。お客様にとっても利便性が高いのではないだろうか」(村岡氏)

 現在はテスト的に実施していることもあり、「ここの店舗であれば、どの店舗スタッフから接客を受けられる」と把握している常連客の利用が多い。そのため比較的スムーズに進行しているが、村岡氏によると、この「誰から接客を受けられるか」という安心感を提供することが、ビデオ接客を行う上では重要なポイントになるという。

 「日ごろからリアルで接客を受けたり、SNSの投稿を見てファンになってくださったりと、店舗スタッフに対する信頼があるからこそ、お客様はビデオ接客を予約してくださる。現場あってのビデオ接客だと感じている」(村岡氏)

 現状は店舗単位で予約を受け付けているが、ゆくゆくはスタッフに予約をするという形で、個人単位での申し込みに変えていきたいという。

バロックジャパン流、オンライン接客ツールの使い分け方

 バロックジャパンではビデオ接客以外にも、用途や目的に応じて、SNSを含めさまざまなツールを使い分けている。

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