
スターバックス コーヒー ジャパン(以下、スターバックス)のパーパスが「Our Mission and Values」。社員はもちろん、「パートナー」と呼ぶ国内の約1700店舗で働く約4万人の従業員の行動規範だ。自発的な行動を促すため、独自の人事考課手法などさまざまな“仕掛け”を設けている。
「Our Mission and Values」の内容は時代に応じて変化してきた。2009年に従来の「Mission Statement」を見直して「Our Starbucks Mission」となり、15年に「Our Mission and Values」へ進化し、16年には対外発表を行った。内容は世界中で同じ。Our Missionの日本語訳は「人々の心を豊かで活力あるものにするために──ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」。Valuesには「私たちは、パートナー、コーヒー、お客様を中心とし、Valuesを日々体現します。」「お互いに心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくります。」などがある。
スターバックスで当時、日本語翻訳を担当した「Our Mission and Valuesワーキングチーム」は11人。各部門からのメンバー9人とアドバイザーとしてCEO(最高経営責任者)の水口貴文氏や人事部門の責任者も参加した。単に翻訳するだけでなく、そこに込められた背景や思いを理解し、今、変わることにどのような意味があるのか、誰のために何を生み出したいのかを所属や店舗、本社の垣根を越えてディスカッション。伝統を受け継ぎつつ、変わり続ける世の中で、自分たちがどのように行動すべきかを、よりシンプルで分かりやすいものにしたという。このOur Mission and Valuesを浸透させるため、スターバックスでは社員や店舗のパートナーとも徹底的にコミュニケーションを行い、自発的な行動を促そうとしている。
独自のツールやカードを駆使
例えば店舗を訪れると、隅のほうでストアマネージャー(店長)とパートナーがパソコンを挟んで話し込んでいる光景を見ることができるかもしれない。これは4カ月に1度、約1時間を使ってストアマネージャーとパートナーが、人事考課の面談を行っている様子だ。同社の学習用オンラインツール「Grow」の画面を開いてパートナーは自分の目標を確認し、ストアマネージャーと一緒にOur Mission and Valuesに基づいて期間中にどう行動したのかを振り返り、次の目標につなげる。このとき質問する内容は「自分がなりたい姿とは何か」「あなたはなぜ、ここにいるのか」など、自らの存在意義を問うようなものが多い。一方的に指示するのではなく、なぜ働くのかといった意識を根本的に揺さぶり、自ら考えて実行させるためだ。
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