
ファーストリテイリングや味の素などの社外取締役を務める一橋大学ビジネススクール客員教授の名和高司氏は、英語の「Purpose(パーパス)」を日本語の「志(こころざし)」に置き換えた「志本経営」を提唱している。従業員の内発的動機から生まれるパーパスを掘り下げて実践することが、企業経営を見直すきっかけになるという。
一橋大学ビジネススクール客員教授
――近年は企業を取り巻く環境が急激に変化しています。パーパス経営を導入する動きも加速していますが、パーパスはミッションやビジョンと、何が異なるのでしょうか。
名和高司氏(以下、名和) 一言で言えば、外発的か、内発的かの違いです。ミッション、ビジョン、バリューは外から与えられたものですが、パーパス、ドリーム、ビリーフなどは内側からにじみ出てくるものです。私はパーパスを「志」と呼んでいます。
志は「~すべきだ」ではなく「こうありたい」「ワクワクする」「ならでは」から出てくるものです。長く使われてきたミッションも、一度見直して「これが私たちの志だ」と思えればいいのですが、「一生かけてやりたいことは本当にそれなのか」「本当に、従業員にとって自分事化されているのか」をはっきりさせなければいけません。
――海外でもパーパスは内発的に、内側から出てきたものなのでしょうか? 近年は社会課題の解決やSDGs(持続可能な開発目標)を掲げる企業も増えています。
名和 海外から入ってきたパーパスと、私の言っているパーパスは違うものです。私は海外の動きは気にしなくていいと言っています。日本企業はこれまで、海外の企業文化を取り入れる中で、本来の「志」を忘れてしまいました。その「失われた30年」のスタンスを変えたいですね。メディアで取り上げられやすい社会課題の解決やSDGsへの取り組みも、多くは外的なものです。パーパスは経営者と従業員が「何をやりたいのか」なのです。
――米国ではミレニアル世代がパーパスを非常に重視しているといわれますが、日本のミレニアル世代はそこまで強く支持している様子はありません。日本企業がパーパスを掲げることで人材を集め、企業の在り方を変えていくことはできるのでしょうか。
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