パーパスブランディング最前線 第9回

老舗洋菓子メーカーのユーハイム(神戸市)は、2022年の日本開業100周年を機に、ブランドの再構築(リブランディング)に取り組んでいる。次の100年に向けて原点に立ち返り、経営戦略を刷新。企業理念を見直し、「パーパス(存在意義)」を策定した。

2022年3月にリニューアルオープンした「ユーハイム神戸元町本店」の店内。神戸市中央区の元町商店街にある路面店。クリエイティブディレクションはHAKUHODO DESIGN社長の永井一史氏が担当。1階の内装をはじめ、社名のロゴやパッケージ、ショッピングバッグなどもリニューアルした。客足が伸び、22年3月の売り上げは19年同月比20%増と好調だ(写真/山本尚侍)
2022年3月にリニューアルオープンした「ユーハイム神戸元町本店」の店内。神戸市中央区の元町商店街にある路面店。クリエイティブディレクションはHAKUHODO DESIGN社長の永井一史氏が担当。1階の内装をはじめ、社名のロゴやパッケージ、ショッピングバッグなどもリニューアルした。客足が伸び、22年3月の売り上げは19年同月比20%増と好調だ(写真/山本尚侍)

 ユーハイムは2022年3月、神戸元町本店をリニューアルオープンした。22年はユーハイムが日本に初出店してから100年という節目の年で、次の100年に向けてリブランディングに取り組んでいる。神戸元町本店のリニューアルはその一環で、全国のユーハイムも順次リニューアルしていくという。

 同社は、00年ごろからユーハイムのブランド力を生かし、同じ製品カテゴリーでブランドを増やすマルチブランド戦略で業績を伸ばしてきた。だが、時代のニーズや環境の変化などを受けて経営方針を見直し、20年ごろからリブランディングに着手。ユーハイムの原点に立ち返り、展開中のブランドは今後、「ユーハイム」に統一していく計画だ。

 食品添加物を使わない「純正自然」と称した「お菓子づくり」と「職人技」を軸に、従業員が一丸となってお菓子の価値を広めていこうという考え。「私たちがやるべきことは、100年前から受け継いできたレシピは変えず、無添加でおいしい今の時代のユーハイムのお菓子を作ること。それを次の世代に受け渡していくことが使命だと思っている」(ユーハイム社長の河本英雄氏)

ユーハイムの河本英雄社長。1999年にユーハイムに入社し、2015年より現職(写真/山本尚侍)
ユーハイム社長の河本英雄氏。1999年にユーハイムに入社し、2015年より現職(写真/山本尚侍)

 同社は、新型コロナウイルスの流行以降、2つの工場を閉鎖し、全国の30店舗を閉店した。河本社長は「100周年に向けてお祝いムードを高めていくはずが、100年に一度の危機となった」と話す。そうした状況を乗り切るためにも、22年3月、大切に守ってきた歴史を振り返りながら企業理念を再定義。リブランディングの指針として「お菓子には世界を平和にする力がある」というパーパス(存在意義)をはじめ、ミッション(使命)やバリュー(価値観)、プリンシプル(行動規範)も策定した。HAKUHODO DESIGN(東京・港)の協力を得た。

従業員向けに製作した冊子の中面。創業者がなぜ、菓子作りに生涯をささげ、代々どのように受け継いできたか。また、誰のために、どのように自分たちのお菓子を作り、次の時代につないでいくべきか。それらを示すパーパスやミッションの解説や、企業理念を読み解き直した「新訳 企業理念」などがまとめられている
従業員向けに製作した冊子の中面。創業者がなぜ、菓子作りに生涯をささげ、代々どのように受け継いできたか。また、誰のために、どのように自分たちのお菓子を作り、次の時代につないでいくべきか。それらを示すパーパスやミッションの解説や、企業理念を読み解き直した「新訳 企業理念」などがまとめられている

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