パーパスブランディング最前線 第3回

なぜ今、パーパスが注目を集めるのか? パーパスを軸にした経営に欠かせないものは? シンクタンクのリ・パブリック(東京・文京)共同代表の市川文子氏と、デザインファームのKESIKI(東京・渋谷)パートナー、石川俊祐氏に聞いた。

市川文子氏と石川俊祐氏(写真/名児耶 洋)
(写真/名児耶 洋)
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市川 文子(いちかわ ふみこ)氏(左)
リ・パブリック共同代表
慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。フィンランドのノキア、博報堂イノベーション・ラボを経て現職。豊富なリサーチ経験をもとにイノベーションの生態系についての研究と実践を手掛ける

石川 俊祐(いしかわ しゅんすけ)氏(右)
KESIKIパートナー
英Central Saint Martins卒業。パナソニックデザイン社、英PDDなどを経てIDEO Tokyo立ち上げに参画。BCG Digital VenturesにてHead of Designを務めたのち、2019年KESIKI設立

──パーパスとは?

市川文子氏(以下、市川) パーパスと聞くと、ミッションやビジョンと何が違うんだろうと思いますよね。パーパスがそれらと決定的に違うのは、アクションとセットになっている点。アクションを起こすには、改めてステークホルダーと合意形成をする必要があります。

石川俊祐氏(以下、石川) パーパスは、「存在意義」とも訳されますよね。特に若い世代は、社会的な意義や自分にとっての意義を見いだせなければ、その企業にいる意味がないとさえ感じるようです。

市川 なぜ会社が存在するのか、なぜ存在しなければいけないのかを問う作業には、これまでの経営を振り返ることが必然的に含まれます。

石川 あらゆる視点から会社そのものを再定義するという覚悟が必要で、かなりヘビーですよね。

市川 ビジネスモデルやサプライチェーンなど、それまでのビジネスを大きく変えなければならない場合もありますね。

石川 存在意義を発信するからには、それを実行する必要があります。さらに、そういった取り組みを、透明性をもって進めなければなりません。単に掲げて終わりでは、社内からも社外からも、「また言ってるよ」とか、「どうせやらないんだろう」と思われてしまいます。

市川 「地球にやさしく」と言ったときに、例えば現場のペーパーレスが実現できていなければ、その時点で口だけだと評価されてしまいます。アクションとひも付いたパーパスの発表は、企業にとってかなり勇気が必要な行為だと思います。