
2022年3月期の営業利益が1兆円を超えるなど、業績好調で、パーパス経営における先駆的存在として語られるソニーグループ。従業員の8割以上がポジティブに捉えるなど、パーパスは組織内に着実に浸透している。その過程で大きな力を発揮しているのがクリエイティブセンターだ。
2019年1月、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」という「パーパス(存在意義)」を発表したソニーグループ。併せて、「夢と好奇心」「多様性」「高潔さと誠実さ」「持続可能性」という4つの「バリュー(価値観)」を制定している。
このパーパス策定は、18年4月にトップに就任したソニーグループの会長兼社長CEO(最高経営責任者)の吉田憲一郎氏が中心となって推進したものだ。就任後、吉田氏は従業員向けのブログを開設した。18年7月に同ブログにおいて、それまでのミッションの見直しを世界約11万人の従業員に呼びかけ、パーパスづくりに取り掛かった。事業領域が多様化し、業績が回復しつつある転換点に、企業としての存在意義を見直そうと、それまで掲げていたミッションやビジョンを刷新するプロジェクトが、トップ主導でスタートしたのだ。
対話を通じてビジョンからパーパスに
パーパスの策定には半年ほどを費やし、19年1月に社内外に発表した。世界中の従業員から意見を募り、対話を繰り返したほか、各事業部門のトップと吉田氏が議論するフェーズもあった。経営層だけで決定することなく、広く従業員の意見やフィードバックの収集を重視したプロセスからは、より精度の高いパーパスを求めようという意思や、策定後の組織内への浸透を意識していたことがうかがえる。
そもそも、取り組みのスタート時にはミッションやビジョンの刷新を目指しており、パーパスをつくろうとは思っていなかったという。
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