
企業経営において「パーパスブランディング」への注目度がここ数年、急速に高まっている。「パーパス(Purpose)」とは「存在意義」のこと。企業や組織、ブランドがなぜ社会に存在するのか、そこに属する社員は何のために働いているのか──自分たちが存在することの意味を端的に表現したものがパーパスだ。それを起点とするのがパーパスブランディングだが、パーパスは「決めて終わり」ではない。安易に取り組めば、逆にリスクになりかねない。
国内外を問わず注目を集めているパーパス。例えばソニーグループは2019年、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というパーパスを発表し、話題となった。その後、多くの企業が自らのパーパスを打ち出すようになった。
海外ではさらに先行している。マーケティング分野の巨匠、フィリップ・コトラー氏がパーパスについて言及したのは13年のこと。マーケティングの基本となる4P(Product、Price、Place、Promotion)に、5つ目のPとしてパーパス(Purpose)を加えると発表した。世界最大の資産運用会社である米ブラックロックのラリー・フィンクCEO(最高経営責任者)は18年、投資先企業に毎年送っている年次書簡の中でパーパスの重要性を訴えた。
パーパスを重視する経営者も増え続けている。「KPMGグローバルCEO調査2021」によると、「企業の目的は、顧客、従業員、投資家、コミュニティを含むすべてのステークホルダーに長期的価値を創造するために、あらゆる活動にパーパスを組み込むこと」と考える日本の経営者は72%に上った。20年の同調査では45%だったから、大幅な増加といえるだろう。ちなみに同調査のグローバルな結果では、パーパスを重視する経営者は64%だった。主要11カ国で見ると、日本の数値はドイツ(74%)に次いで高い。
パーパスに注目が集まる以前にも、多くの企業は「ビジョン」「ミッション」「バリュー」を掲げてきた。古くは「社是」という形で自らの“よりどころ”を示してもいた。それらとパーパスとは、何が違うのだろうか。
一橋大学ビジネススクール客員教授の名和高司氏は、「パーパスとは『志』だ」と言う。ミッションやビジョンは外発的なもの。これに対して、パーパスは内発的なもの。「~すべき」ではなく「こうありたい」という思いから出てくるものだという。
ステークホルダーの共感を得られるか
パーパスへの関心がこれほど高まっている背景には、主に3つの要因がある。
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