一方、ビーグリーが新たに掲げたLTV重視戦略はその正反対。より顧客に適した高単価の作品を推奨し、ポイントの消費を促していくことの優先度が高まった。従来のツールはCVR偏重型ゆえに、CVRが相対的に低くなる消費ポイントが高い作品が推奨されづらい傾向にあったため、新戦略と適合しなくなった。「1話単位で売る“マイクロコンテンツ”は、CVRは高いものの収益性は低い」(吉田氏)

(22年2月掲載の特集「マーケツール導入/乗り換えの極意」を細分化したものです。)
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 電子コミックのトレンドも変わった。『鬼滅の刃』や『東京リベンジャーズ』といったアニメ化のヒットにより、電子版の単行本の需要が高まっていた。まさに高単価の作品だ。ところが、「人気漫画を電子版で購入したい会員が増えているのに、従来導入していたツールにはそうした作品を優先的に推奨するロジックではなかった」(吉田氏)。これが決め手となり、ツールの乗り換えを決意した。

 導入していたツールのロジックをカスタマイズするという選択肢もなかったわけではない。だが、「カスタマイズの改修はあくまで仮説ベース。開発コストをかけたとしても、成果につながる保証はない」(吉田氏)。であれば、ツールそのものを入れ替えて、LTV戦略に適したものを選択するほうが労力がかからず、かつ成功の確率も高いと踏んだわけだ。

経営戦略の転換に伴い、求められるレコメンドツールのロジックも大きく変わった
経営戦略の転換に伴い、求められるレコメンドツールのロジックも大きく変わった

 乗り換え候補を選ぶうえで、最も重視したのは当然レコメンドのロジックだ。「単価という指標や、既存顧客にリテンションするために併読作品といった観点をうまくロジックに組み込むことが必要不可欠だった」(吉田氏)。また、ビーグリーは自社でも独自のレコメンドAI(人工知能)を開発していた。男女、漫画のジャンルなどで細かくセグメントを分けて、推奨作品を表示する長年の事業で培ったノウハウを生かしたAIだ。そうした独自のロジックとの連係の可否も重要なポイントだった。

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