横浜名物「シウマイ」の崎陽軒(横浜市)の進化が止まらない。当時の横浜駅で創業、駅弁として人気を博し、デパ地下、ロードサイド、空港、スタジアム、そして海外へ。コラボにも積極的だ。2023年の創業115年を前に、創業家の4代目として社長に就いた野並晃氏は「原点はやっぱり地元・横浜。ローカルブランドを極めていきたい」と話していた。(聞き手は日経MJ編集長 永井伸雄)
崎陽軒 社長
――鉄道開業150年の2022年、JR東海などとコラボしています。
野並晃氏(以下、野並) JR東海とのご当地シウマイ大使認定講座は8月に続いて、今年2回目です。各地の皆様がいろいろな食材を使ったシウマイを提案してくれて、当社の知見も広がりました。コラボの申し出をいただく中で、どんなことができるか、やるなら、今までやったことがない取り組みなら面白いだろうと。社員もどんどん挑戦してくれます。
――横浜駅構内で創業して1世紀あまり。売り場は広がり、コアなファンも多いです。
野並 当初は一駅一駅の停車時間が長く、列車の窓から手を出して買う時代で、今はホームドアが設置され、ホームを売り子が歩き回る世の中はもう来ません(笑)。駅での売り方もちょっとずつ変わってきました。昔よく聞いた話で、列車のスピードが速くなるほど(列車の中で食べる)弁当の売り上げは落ちると。一方、すぐ着くのでお土産としての新たな利用シーンが生まれました。社会の変化に合わせて、お客様に楽しみ方、利用シーンなどを提案し続けていきたいですね。
弊社の製品は、場面場面の主役になることはありません。横浜スタジアムでの野球観戦など、何か行動を伴った時に、たまたまそばにいて「じゃあ買おうか」という存在でいたい。シウマイ、シウマイ弁当が生活の中でお邪魔するシーンをどれだけ作っていけるか。
――空港、デパ地下にも店が広がっています。
野並 駅を利用するお客様なら目的地となる商業施設、移動が列車以外に飛行機となれば空港と、チャネルを広げていった結果です。コロナ禍では移動がなくなりました。旅の気分が味わえないなら、自宅で楽しめる「おうちで駅弁シリーズ」を開発したり。そういうことを繰り返すことで、お客様に認知し続けられるのかなと。グッズは食べるシーンではなくても、ご家庭の中にあり続けられます。
――飽きられないために、どんな工夫をしていますか。
野並 シウマイ、シウマイ弁当の味は基本的に変えるものではないと。シウマイは地元・横浜の皆様に育てていただいたもの。崎陽軒は横浜の皆様からシウマイとシウマイ弁当の製造と販売の権利をいただいています。横浜の皆様が変えるべきだといえば変えなきゃいけない。一方、食の楽しみ方の観点でいえば、いろいろなラインアップがあればいいわけです。
横浜名物、コラボで進化
――福井県など横浜以外とのコラボが増えています。
野並 経営理念はナショナルブランドを目指さず、優れたローカルブランドを目指すとしています。同じ商品を全国に展開しようとは考えません。「関西シウマイ弁当」、福井県との食材協定、栃木県鹿沼市との取り組みは先方が崎陽軒と組めばなにか面白いことできるのではという発想で生まれました。それぞれの地域の課題が崎陽軒を使って解決できるのであればいいなと考えています。そういう取り組みがローカルブランドをさらに強めていくことになります。
――横浜ブランドを売るわけではない、と。
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