大手清涼飲料メーカーで先陣を切って希望小売価格の引き上げを発表したサントリー食品インターナショナル。客寄せのための値引き対象からどう脱却するのか。斎藤和弘社長は「まず技術開発に力を入れて商品の魅力を高め、消費者に価値を的確に伝える」と業界のプライスリーダーならぬBOSS(ボス)へ、意欲を示した。(聞き手は日経MJ編集長 永井伸雄)
サントリー食品インターナショナル社長
――先陣を切って値上げに踏みきりました。
斎藤和弘氏(以下、斎藤) 1990年代にウーロン茶の2リットルのペットボトルは300円台でしたが、今は半値以下です。天然水などはスーパーなどでロスリーダー(客寄せのための目玉商品)に。お客さんから見たときの商品価値が固定されてしまっています。天然水は山の中の衛生的な工場でつくり、遠くまで運んでも、その値段です。
メーカーも流通も、みんなで価値を崩しあってしまった。「価格=バリュー」なのに、こんなことを長年続けてきたのは日本だけです。値上げしないと賃金も上げられません。日本の競争環境は特殊で、飲料だけで食っている会社としては、ちゃんとしなきゃいけないと思いました。
――トップシェアの企業が値上げするのを待たなかったのですか。
斎藤 待っていたら食えなくなります。本当に厳しい状況です。(値上げを)アナウンスしたら、他社がついてきてくれるかもと考えてはいました。ただ、下がり続けた実勢価格が少し上がるだけなので、果たしてこれは値上げなのでしょうか。
――大容量は2019年にも上げました。
斎藤 それなりの効果はありました。でも、今回のコスト上昇はもはや、そういうレベルではありません。転嫁はリテール(小売り)全体で進めていかないと。
――値上げと同時にバリュー(価値)も上げるべきではありませんか。
斎藤 当社は毎年、値段が下がっている中でも中身とかパッケージとかを全部見直してきました。海外でも、です。新しい技術ができたときには、まずコアブランドに注入しています。優先度合いでは7割。残り3割は新しい商品に向けています。
コロナ禍の時は店舗での滞在時間が限られ、お客さんが何か買おうとした際に思いつくのは、せいぜい2ブランド、プラスPB(プライベートブランド)。各カテゴリーで2位以内に入らないときついのです。昔は3位まででしたけれど。
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