南太平洋に浮かぶ世界で3番目に小さい国、ナウルの政府観光局がツイッターで奮闘している。アカウント開設から2年。フォロワー数はハワイやフランスなど並みいる人気観光地を抜き去り、同国の総人口の約37倍にあたる37万人超に達した。予算なし、直行便なし、ツイッターの公式マークなし、入国制限あり。逆境のなか孤軍奮闘するナウル共和国政府観光局の「中の人」に話を聞いた。
「世界最強パスポートを持つ日本国民の皆様へ ビザなし国ばかりで飽きていませんか?」
こんな投稿が一時、ツイッターをにぎわわせた。ナウル政府観光局が考案した宣伝文句だ。「何もないけど、ビザはある ナウル共和国」
ナウル入国の難易度は高い。英コンサルタント会社、ヘンリー&パートナーズによると、日本のパスポート保有者が査証(ビザ)なしで訪問できる国や地域の数は現在193に及ぶ。だが世界一の強さといわれる日本のパスポートをもってしても、ナウルにはビザなしで入国できない。
直行便もない。日本からの距離でみれば「ハワイより近い」(ナウル政府観光局)のだが、所要時間はケタ違いだ。もっとも一般的な行き方であるオーストラリアのブリスベン乗り継ぎの場合、飛行時間だけでも最短14時間を要する。
新型コロナウイルス流行前、ナウルを旅する日本人観光客数はゼロに近かった。2019年の実績は「正式な観光統計は何度要請しても出てこないのではっきりしないが、3人だった可能性が高い」(ナウル政府観光局)。しかしツイッター開設から2年、SNS上では「今いちばん行きたい国はナウル」との声があふれるようになった。
都内に住む三橋理恵さん(47)もツイッターをきっかけにナウルの存在を知った1人。日常的に使う都電荒川線で広告を目にし、関心が急上昇した。「ナウルのツイッターは素朴で身近。かなり興味があり、行けるなら行きたい」(三橋さん)
ナウル政府が頼ったツイッター中の人は「SNSの素人」
ナウル政府観光局が日本事務所の立ち上げに伴い、ツイッターにアカウントを開設したのは20年10月。同国が日本に代表機関を置くのは31年ぶりだった。かつてリン鉱石の採掘で栄えたナウルは資源枯渇で財政危機に陥り、1989年には日本にあった領事館を閉鎖していた。風向きが変わったのは2019年。これからは観光に力を入れるという政府方針で観光公社が設けられ、なぜかピンポイントで日本に事務所が立ち上げられた。
ただ、観光局ができたのは新型コロナ禍のまっただ中。ナウル政府はすでに観光客の受け入れを停止していたため、日本事務所には「渡航はできないが、ひたすら知名度を上げる」とのミッションが課された。
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