日本全国を車で旅しながら仕事も続ける――。車で暮らす「バンライフ」の広がりで移動生活が身近なものになりつつある。新型コロナ下で密を避けたレジャーとしてキャンプに注目が集まるなか、キャンピングカーをシェアするサービスや駐車場に泊まれる施設などが充実してきている。

※「日経MJ」2022年5月11日付記事「仕事も連れてバンライフ」を再構成したものです
キャンピングカーを借りて記者がワーケーション体験した(神奈川県葉山町)
キャンピングカーを借りて記者がワーケーション体験した(神奈川県葉山町)

 「自然を感じる生き方をしていきたい」。そう話すのは軽トラックを改造したキャンピングカーで全国を旅する安倍大資さん(36)だ。安倍さんは2021年から約半年をかけて北海道から鹿児島県まで46都道府県を旅した。

 安倍さんは同年に設立したコーチングの会社でオンライン研修を提供しながら、自身は4月から京都芸術大学大学院でパーソナルデザインについて学んでいる。オンライン研修などではスマートフォン経由でインターネットに接続する「テザリング」を使っており、「電波が通じずに困ることはほとんどない」という。

 働き方が柔軟になってきていることも安倍さんのバンライフを後押しした。「仕事はどこでもできる」といい、休憩がてら運転して「いい感じの砂浜を見つけたら、ここで寝ようかな」といった「風に吹かれるまま」の生活を続けている。

安倍大資さんは軽トラックを改造したキャンピングカーで全国を旅しながら仕事もする
安倍大資さんは軽トラックを改造したキャンピングカーで全国を旅しながら仕事もする

 昭和女子大学に通う宮本芽依さん(22)は22年4月から自分で改造したキャンピングカーに住み始めた。米国留学を経験した高校生のときにインスタグラムを通じてバンライフの自由さを知り、「いつか自分の車でやってみたい」と思っていた。

 転機が来たのは新型コロナウイルスの感染が世界で広がった20年だった。中国留学から日本に帰国した宮本さんは、「思い切って(バンライフを)今やっちゃおう」と考えた。レンタルした車で計2カ月間の車中泊を経験し、21年9月にはアルバイトでためたお金で日産自動車のワゴン「キャラバン」の福祉車両を購入した。自分の手で約4カ月をかけて改造し、22年4月にキャンピングカーとして車検に合格した。

 大学では4月から対面の授業が始まったので、週に3日は東京都世田谷区の車中泊施設に滞在し、残りの4日を使って日本を旅するという。「大学在学中に47都道府県に行くのが目標だ」と話す。

22年4月から本格的にバンライフを始めた宮本芽依さん
22年4月から本格的にバンライフを始めた宮本芽依さん

キャンピングカー市場はコロナ禍前の2割増

 新型コロナ下で密を避けて楽しめるレジャーとしてキャンプに注目が集まり、キャンピングカーの需要も増えている。業界団体の日本RV協会(横浜市)によると、新車・中古車を合わせた国内のキャンピングカーの販売額は21年に635億円と、新型コロナ前の19年に比べて2割増加した。

 バンライフに興味はあるが、キャンピングカーの購入にはハードルを感じるという人も多いだろう。手軽に体験したいという需要を取り込もうと各社はサービスを充実させる。

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