商品の値上げが相次ぐ小売業界で、店舗のデジタルサイネージ(電子看板)を活用する動きが活発だ。人工知能(AI)を駆使し、来店者の好みや行動解析によって表示する広告を変え、購入の最後の一押しとなっている。小売店やメーカーは価格だけではない商品の価値で消費者をひき付ける。

※「日経MJ」2022年6月29日付記事「最後の一押しは電子看板」を再構成したものです
トライアルの店舗では、来店者ごとにアプローチできる決済機能付きの買い物用カートを活用している
トライアルの店舗では、来店者ごとにアプローチできる決済機能付きの買い物用カートを活用している

 香りにこだわったペットボトルのアイスコーヒーを選ぶと、買い物カートの液晶画面にメルシャンの「甘熟ぶどうのおいしいワイン赤」がオススメとして現れた。コーヒーとワインでメーカーもジャンルも異なり、一見関連はなさそうな2つの商品。結びつけたのは「豊かな香り」という共通の特徴だ。レコメンドを受けた来店客からは「潜在的にほしかったものに気づくことができた」との声も聞かれる。

 トライアルホールディングス(福岡市)傘下企業が運営するディスカウント店「スーパーセンタートライアル アイランドシティ店」(同市)では、決済機能付きの買い物用カート「スマートショッピングカート」を利用した実験が進む。

 消費者はカートで特定商品をスキャンすると、それと同様の特徴を持った商品が売り場の場所や価格と一緒に表示される。特徴は個々に登録されている数万の商品の説明文をAIの自然言語処理の技術を使い「素材重視」や「健康・栄養」「濃厚」など17に分類した。

 実証実験は製造・配達・販売の約260社が加盟する一般社団法人「リテールAI研究会」(東京・千代田)の分科会として2022年4~7月にかけて、トライアルのほか、日清食品やメルシャンなど飲料や食品、日用品メーカーなど8社が参加している。参加企業の32のレコメンド商品に対し、特徴の分類に応じた約700の組み合わせを登録した。

 例えば「スパイシー」や「濃厚」といった特徴を持つ、辛口で味が濃いスナック菓子をスキャンすると、日清食品の袋麺「爆裂辛麺 韓国風 極太大盛激辛焼そば」がレコメンドされる。実験では特徴が共通する商品の組み合わせとそうでないものを表示した。すると共通の組み合わせの方がそうでないものに比べ、購買が2倍になった事例もあるという。

 参加企業の1社でマーケティングを手掛ける西川コミュニケーションズ(名古屋市)の担当者は「今回の実験は、POSデータなどを活用した購入履歴に基づいた提案ではない新しいスタイル。これまで手掛けてこなかった、新商品やカテゴリーが異なる商品をオススメすることができる」と狙いを話す。結果として、消費者が意図していなかった非計画購買を促すこともできるという。

AIを駆使したデジタルサイネージの活用が進む
AIを駆使したデジタルサイネージの活用が進む

 トライアルの「スーパーセンタートライアル アイランドシティ店」は午前9時~午後10時のスマートショッピングカートが利用できる時間に1日で3000~4000人が訪れる。お昼前や夕方のピークの時間帯には、レジ待ちが発生しないスマートショッピングカートを利用する客が5割に達する。

 同店は約3600平方メートルの店内に食品だけでなく、日用品や医療品、家電などを取りそろえる。レコメンド機能の実用化は未定だが、トライアルの実証実験の担当者は「ジャンルが異なる商品も顧客の嗜好に適合する形でより細かくレコメンドできる。さらにほしいものを買うことができる店になれば客数増につながる」と期待する。

来店客の行動に応じて販促動画を出し分け

 リテールAI研究会の別の分科会では、来店者の行動によってデジタルサイネージの内容を変える実証実験も進めている。カルビーや大手コンビニなど約10社は19年度と21年度の2回にわたって効果的な店舗での販促を検証した。店舗の90センチメートル幅の商品棚の最上段にサイネージの画面を設置し、客が「棚の前を通過」「立ち止まる」「商品を手に取る」の3段階で流す動画を変えた。

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