任天堂の「スーパーマリオ」を題材とした映画が、歴史的なヒットになっている。公開3週間で世界興行収入は1000億円を超え、アニメ映画としての最高記録も射程に入った。共同プロデューサーを務めたのはマリオの生みの親、宮本茂代表取締役フェロー。マリオはフィールド上ですべっても、宮本さんはすべらない。ヒットを連発する仕事術を聞いた。
――「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」(日本では2023年4月28日から公開)のここまでのヒット、想像していましたか。
宮本茂氏(以下、宮本) 僕は自分で作ったものでも退屈すると寝てしまう性格なんです。今回はいい意味で緊張感を持って最後まで楽しめるものができました。米国での試写の反応を見て、結構なところまでいくかもなとは思っていました。
マリオのゲームファンが見ても、ゲームを知らない人が見ても楽しめるものを作りたかった。一番求めていたのは「心に残った」などではなく、純粋に「すごく楽しかった」と言ってもらえること。(任天堂のゲームで)家族で楽しい時間を過ごすリビングの雰囲気を、そのまま劇場に持って行くのが目標でした。
――最近の映画は「マルチバース(多元宇宙)」など設定が複雑化しています。
宮本 今回の映画ではいろいろな場面で状況を説明するようなセリフを省きました。シーンの描写を見れば、マリオがなぜここに来たのか、何を目指しているのか、分かるはずです。僕は10年ほど前から(NHKの)「朝ドラ批評家」を自称していますが、作品によっては場面説明がやたら多いものがある。あれは見ていて分からない人向けに仕方なくやるもので、本来的には状況説明がないドラマが一番だと思ってます。
――ゲームにも通じるところがあります。
宮本 「ゼルダの伝説」もそうです。続編を作れば作るほど設定は複雑になりがちですが、そうなるとセリフで説明することになる。それをいかに減らすかという工夫は普段からやっています。
――「ミニオンズ」などを手掛けたアニメ製作会社、米イルミネーション創業者のクリス・メレダンドリさんと共同製作しました。
宮本 10年ほど前に初めて会った時、彼は僕の過去の取材記録をまとめたプレゼン資料を持ってきました。それを見せながら「このコメントは俺と考えが同じだ!」と。コンテンツの製作手法も似ているので一緒に映画を作りませんかと提案され、企画が動き始めました。
僕が「ちゃぶ台返し」とよく言われている作品の大きな方向転換を傷なくやる方法や、それをする勇気。冷静に問題の優先順位をつける点や、現場と自分のクリエーティビティーのバランスの取り方などが共通していました。加えて感動したのは、過去作品の失敗談を語れるところです。
――ご自身も反省を重んじるタイプですか。
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