資生堂の社長が2023年1月、約9年ぶりに変わった。14年から社長だった魚谷雅彦氏(68)が会長となり、常務で中国地域のトップだった藤原憲太郎氏(56)が社長を務める。日用品事業売却など構造改革を経て「世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー」に向けて「二人三脚で経営体制を強化する」(魚谷会長)狙いだ。仏ロレアルなど世界大手の背中は遠いなか、海外事業のギアを上げられるか。
魚谷会長は2023年を「躍動の年」と表現する。資生堂にとって、151年目の新しい始まりの年でもある。「新型コロナウイルスの流行からもう3年。守りから攻めへと転じ、生活をアクティブにしようというメッセージを発信したい」と意気込む。
資生堂は20年12月期、新型コロナの流行で事業環境変化に見舞われて8期ぶりの最終赤字に陥った。魚谷氏が20年春から各地域のトップと検討を始めたのが資生堂の抜本的な構造改革だ。そこで、化粧品のなかでも資生堂が他社と差別化できる「スキンビューティー」領域に集中し、アジア発という特色を磨く方向にかじを切ることを決めた。スキンケアのほか、メーキャップでも「肌によいことをアピールできるもの」(同社)に集中する。
そして、21年に入ると「TSUBAKI」「専科」などのブランドで知られる日用品事業の譲渡を皮切りに、大胆な事業整理を相次いで発表した。日用品事業は投資ファンドに譲渡し、新会社「ファイントゥデイ資生堂」(現・ファイントゥデイ)として再始動した。10年に約1700億円の大型買収として注目を集めたが赤字が膨らんでいた「ベアミネラル」のほか、「ローラメルシエ」「ドルチェ&ガッバーナ」などのブランドを手放す決断をした。22年には美容室向け事業や、資生堂に残っていた日用品工場の譲渡も発表。わずか2年の間に、今後の核にならない事業の切り離しを発表した。
とがった特長を持つメーカーとして世界に伍(ご)する道を選んだ資生堂。魚谷会長は「構造改革を進めたのも力をつけるため。これから2年間で勢いを取り戻す」と話す。これまでも中国事業をけん引してきた藤原新社長も「コロナ禍前に取り組んだように、ブランド価値を高めて研究開発でイノベーションを起こし、いい商品を作る。今後はより社員の発想を生かし、これを加速する」と意気込みを語る。
高級路線でロレアル追う
日用品事業だけでも売上高で1000億円規模の縮小を決め、いわば退路を断った形で「スキンビューティー」に特化して世界での成長戦略を描くが、グローバル大手と資生堂の間にはなお大きな差がある。
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