メニューの端の方に申し訳程度に書かれていたノンアルコール飲料が飲食店で存在感を増している。ノンアルのビールだけでなくサワーやカクテルも用意し、果物などをトッピングして見た目にこだわった商品も。健康志向の高まりや新型コロナウイルス禍に伴い、あえてお酒を飲まない「選択的下戸」が増えた。飲食店や飲料メーカーもメニューの多様化に動く。
「味も悪くないから店に来るときは毎回ノンアルのビールかレモンサワーを頼んでいる」。東京・新大久保にある韓国料理の「ホシギ2羽チキン3号店」。平日の午後3時、1人で韓国風ののり巻きキンパなどを食べながらグラスをかたむける50代女性はこう話す。
週に1度は同店を訪れるという女性が飲んでいたのはノンアルのレモンサワーだ。スピリッツや焼酎の代わりにノンアルコールの焼酎エキスを使っている。女性は、コロナ禍で運動や外出をする機会が減って健康に気を使うようになり、昔は1回の来店で10杯飲むほどだったが、今は飲酒をやめたという。
同店はノンアルのビアカクテルや緑茶レモンサワーなど約30種類を用意する。2020年ごろから増やしたという。一押しは韓国から取り寄せたグラスとフルーツを使ったノンアルサワーだ。二重になっていて氷が溶けにくいという透明なグラスにブルーベリーやイチゴのグラデーションが映える。
オーナーのキム・オクチュさんは「新大久保の文化が変わった」と話す。コロナ禍前は仕事帰りに終電間際まで店に滞在する会社員が多かったが、現在は若い女性や韓国スーパーに買い物に来る家族連れがほとんどを占めるという。
都内を中心に31店舗を展開するHUGE(ヒュージ、東京・渋谷)が運営する「THE RIGOLETTO(ザ・リゴレット、東京・渋谷)」は17年の開店当初から、ノンアルカクテルの「モクテル」を提供している。
6種類のメニューのうち、ジャスミン茶やローズマリーシロップを使ったモクテルは、バーテンダーがシェイカーでつくる。カクテルと同じショートグラスで提供し、アルコールを注文したような気分を味わえる。飲料の売り上げに占めるモクテルの割合は3~4%程度だが、体調によってアルコールを飲むか否かを決めたい人や、飲んでいる気分だけ味わいたい客などから人気を集めているという。
ノンアル市場拡大、大手メーカーも注目
サントリーの推計によると21年のノンアルコール飲料市場は前の年に比べて15%伸長し、過去最大となった。ただ、外食でのノンアル市場はまだまだ開拓段階だ。
「取引先の飲食店から、(ビール風飲料の)『オールフリー』だけでいいよと言われることも少なくない」。こう話すのはサントリーの営業推進本部で業務用統括部部長を務める内川順一朗氏だ。
そこでサントリーは、ゴールデンウイークに飲料メニューの6割をノンアルが占める「のんある酒場」を東京駅構内に期間限定で開いた。すると飲料メニューで人気上位5つをノンアルが占め、最も売れたのはノンアルのレモンサワーだった。
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