2022年、日本で独自の進化を遂げてきた缶コーヒーは節目の年を迎えた。「ポッカコーヒー」が発売から50年、サントリー食品インターナショナル(サントリーBF)の「BOSS」が同30年。日本独自の進化を遂げ、働き方の多様化などに対応してきたロングセラーブランドは、独自のマーケティングで新たな需要を開拓しようとしている。
「5分くらいの休憩で飲むにはちょうどいい。グッと飲み干したあとは、あとひと踏ん張り頑張ろうと思える」。普段から缶コーヒーを愛飲している40代男性はこう話す。
2022年8月に30周年を迎えたサントリーBFのボスは、500種類以上の商品を発売してきた。在宅勤務の普及などコロナ禍で働き方が変化するなかで、今年新たに打ち出したのが「一億総“一服”宣言」だ。
国内で販売されるボスのコーヒー豆すべてが焙煎されるサントリーコーヒーロースタリー海老名工場(神奈川県海老名市)。壁一面に歴代商品が並ぶなか、一風変わったロゴの「BOSSおじさん」の商品がある。30周年の記念商品として9月に発売した「ザ・ボス微糖上向く一服」だ。
普段はパイプをくわえるBOSSおじさんがパイプを置き、いつもより少し上を眺めている。コロナ禍で世相が暗くなる中でも上を向いて歩こうというメッセージを込めた。マーケティングを担当する大塚匠課長は「30周年で、もう1度原点に立ち戻ってブランドメッセージを発信したかった」と話す。
発売当初からボスのコンセプトは「働く人の相棒」。在宅勤務にも寄り添おうと始めたのがネットフリックスとコラボした「ボスフリ」だ。商品のQRコードを読み込むと特設サイトでショートムービーを見られる。動画は「イカゲーム」をオマージュした「ウシゲーム」など17話。「少し手を止めて休憩中に見てもらいたい」(大塚氏)という。
缶コーヒーの2大ブランドとしてボスと国内シェアを争う日本コカ・コーラの「ジョージア」。長らく缶コーヒーではシェアトップを維持してきたが、19年以降はボスと毎年順位が入れ替わる激戦を演じる。
そのジョージアが、需要が本格化する秋冬に向けて売り込むのがコーヒーの付加価値を高めた商品だ。10月10日から「ジョージア」ブランドのペットボトル商品では初となる糖類ゼロのカフェラテを2品投入した。乳糖など糖類を使わなくてもミルクの味を損なわないようにした。
キリンホールディングス(HD)の独自素材「プラズマ乳酸菌」の供給を受けることで合意したことも発表。プラズマ乳酸菌入りのジョージアの商品の開発に着手しており、付加価値を高めてボスを追撃する。
時代反映、「顔」も「中身」も
「自社のパッケージデザインを犠牲にしてでもアニメの世界観を大事にする。あくまで飲用するきっかけになればいい」。こう語るのは、「ダイドーブレンド」を展開するダイドードリンコブランド戦略グループの土屋淳一マネージャーだ。
ダイドーは若者の需要を取り込もうと知恵を絞っている。20年に発売した人気アニメ「鬼滅の刃」とのコラボ商品は、累計1億本を販売した大ヒットとなった。22年8月には「東京リベンジャーズ」とのコラボ缶を発売。キャラクターの表情は味に合わせて変えるなど、細かな工夫を施す。
土屋氏は「国内コーヒー市場は40代前後がボリュームゾーンだが、若年層は選ぶ飲み物の幅が広い。今のうちから若年層に手を打たないといけない」と話す。若者にはコラボ缶、40代の中高年には30周年を迎えた「デミタス」を売り込む。
デミタスは30周年を前に、21年にリニューアルを敢行した。1年以上かけ「30周年の今年がピークに来るように準備をした」(土屋氏)。小容量で休憩時間に短時間でもリフレッシュできる深い味わいを追求した。
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