スウェーデンの家具大手イケアの日本法人、イケア・ジャパン(千葉県船橋市)が飲食店などの「フード」事業に力を入れている。店舗の売り上げに占めるフードの割合はグローバル平均を上回る。新型コロナウイルス禍で電子商取引(EC)サイトでの買い物が浸透し、実店舗の魅力が問われるなか、消費者の胃袋をつかんで来店動機につなげている。
「まず店内をざっと見てから、ご飯を食べておなかを満たしながら買う物を整理するようにしている」。都内の企業に勤める飯能茉由さん(26)はイケアでの過ごし方についてこう話す。
現在、イケアのほとんどの店には飲食店や食料品店が入っている。「サーモンフィレ」や「アップルケーキ」といったスウェーデン料理などを提供する「スウェーデンレストラン」、ホットドッグやソフトクリームを販売する「ビストロ」、パンやジャム、冷凍食品などの食料品をそろえる「スウェーデンフードマーケット」だ。
倉庫のように広い店舗が多いイケアにとって、レストランやビストロは本業の家具販売との相乗効果が大きいとされる。レストランは家具売り場と雑貨売り場の間に設けられていることが多く、商品の購入について改めて落ち着いて考える機会にもつながる。
イケア社内ではレストランを「ベスト・ソファ・セラー」(最もソファを売る人)とも位置づけているという。イケア・ジャパンでカントリーフードマネジャーを務める佐川季由氏は「レストランでの時間が、購入の決断の最後の一押しとなることが多い」と話す。
「おなかの満たされている来店者は滞在時間も長く、商品もたくさん買ってくれる」。イケアの創業者であるイングヴァル・カンプラード氏は1953年、スウェーデンに自身初となる家具のショールームを開いた。そこで来店客にコーヒーとビスケットを振る舞ったところ、販売が好調だったという。この経験が現在のイケアのビジネスにも生かされている。
58年にスウェーデンのエルムフルトに開業したイケアの1号店にはコーヒーを飲むことができる小さなコーナーを設置。60年には冷菜などを取り扱うレストランを店舗内にオープンした。
足元の店舗の売り上げに占めるフード事業の割合は、グローバルの平均が約6%のところ、日本は約12%と約2倍だ。この理由について佐川氏は「ここ数年、フード事業の強化にかじを切ったため」だと話す。
日本向けメニュー開発で胃袋つかむ
強化策としてまず取り組んだのが、日本向けのメニュー開発だ。ミートボールやホットドッグなど、グローバルで共通のメニューの他に、日本の消費者に受け入れられやすいメニュー開発に取り組んでいる。
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