車の乗り方が変わっている。世界的な半導体不足で新車の納期は遅れ、中古車の価格も高騰。価格志向を強める20~30代からは月に数万円で利用でき、すぐに使える中古車の「サブスクリプション」が選ばれるようになった。いらなくなればすぐ解約できる点も縛られるのを嫌う若者にうける。自動車は所有しなくてもいい時代。「賢い選択」となった中古車サブスクを使う人を追った。
「買うことも考えたが、とにかくすぐ使いたかったので」
東京都内に住む成田柚さん(25)は2022年5月から自動車サブスクサービス「定額カルモくん」で中古の軽自動車を利用し始めた。4月に社会人になったばかりの成田さんの配属先は駅から遠く、車がないと行きづらい。「最初は自転車で通っていたがつらくて。まとまったお金がなかったので、頭金が不要ですぐに納車される中古車サブスクを選んだ」
中古車サブスクとは毎月定額を支払うことで、選んだ中古車を契約した期間使うことができるサービスだ。一般的に新車のサブスクと比べ安く、カーリースに比べると契約期間が短かったり、他車種への変更ができたりと柔軟な設計が特徴だ。
成田さんは月に約2万5000円を支払い、中古のダイハツ「ミライース」を使っている。「車にこだわりはなく、軽自動車ならなんでもよかった。車検や自動車税も込みの料金でわかりやすく、カーシェアやレンタカーと違っていつでも使えるのがいい」
新型コロナ禍で不特定多数と接触する公共交通機関を避けたい人が増えたことも追い風になっている。中古車リースのMIC(横浜市)が全国の2928人を対象にしたネット調査によると、新型コロナの影響で「以前より車で移動したいと思うようになった」と回答した人は28%に達した。
カーシェアリングサービスから切り替える人もいる。東京都多摩市の野村聡さん(38)は娘が生まれたことをきっかけに8月から中古車サブスクに切り替えた。「子供が急に熱を出したときなど、自分で1台持っているとすぐに車を出せて安心」。車の購入も検討したが、多忙を極める日々の中で「車検やメンテナンス、税金など細かいことを考えずに済む点にひかれた」という。
「定額カルモくん」を運営するナイル(東京・品川)の1~9月の中古車サブスクサービスの契約数は前年同期比2.1倍に伸びている。利用者の中心は20~30代だ。モビリティサービス事業部の伊藤真二さんは「新車サブスクに比べても中古車の方が伸びが大きい」と話す。
新車の納期遅れが中古サブスクの追い風に
中古車サブスクが脚光を浴びる理由の1つは新車の納期遅れだ。世界的な半導体不足で、新車は納入の見通しがつきにくい状況が続いている。納期4年とされていたトヨタ自動車の人気車「ランドクルーザー」は7月に受注を停止。ミニバン「ノア」も10月11日時点で出荷のめどは「注文いただいてから6カ月以上」とされている。
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