国内の格安航空会社(LCC)各社が、フルサービスキャリア(FSC)との連携を強めている。世界的にビジネス利用の回復が遅れるなか、日本では2022年10月11日から入国制限が緩和され、国内旅行を対象とした政府の観光促進策「全国旅行支援」が始まった。LCCが得意とする観光需要の獲得競争も激しくなるなか、「組織戦」で業績立て直しに挑む。
2022年10月5日、全日本空輸(ANA)のウェブサイトやアプリの空席照会に新たな機能が加わった。グループのLCC、ピーチ・アビエーション(大阪府田尻町)のダイヤも、ANAの便と併せて表示するようになった。ピーチの国内全路線が対象で、購入希望者はピーチのサイトに移動して予約する。「開始から1週間で順調に予約が来ている」(ピーチ)状況だ。
「インバウンド(訪日外国人)への認知度を高められる」。ピーチの森健明最高経営責任者(CEO)は期待を込める。ANAの便で海外から来る訪日客に対して、ピーチ便をPRする手段が増えた。
ピーチとANAはコロナ下で販売面の連携を模索してきた。21年8月に旅客便のコードシェア(共同運航)を始め、ピーチの座席の一部をANAの便として販売した。ただ、空港での対応が複雑になるなどの課題があったコードシェアは、22年10月末に中止する。ウェブサイトでの便の表示という「非常にシンプル」(森CEO)な形に切り替える。
FSCとLCCの連携は日本航空(JAL)グループも強化している。22年8月からはJALのマイルを、JALのLCC子会社で中国路線と国内線を手がけるスプリング・ジャパン(千葉県成田市)の航空券などに使えるクーポンに交換できるようにした。
JALが50%を出資するジェットスター・ジャパン(同市)も、22年5月にマイル関連の提携を拡大した。JALのマイルを使ってジェットスターの有料会員プログラムに加入したり、同社のクーポンに交換したりできるようになった。
マイル・予約・機内食で連携、その背景は?
航空会社間の連携が強まる背景には、新型コロナウイルス禍による需要動向の変化がある。テレワークが普及したことで、ANAやJALといったFSCが強みを持つビジネス需要はコロナ前には戻らないとも言われる。FSC2社は観光や知人訪問に強いLCCへの関わりを強め、グループの持続的な成長につなげる狙いがある。
LCCにとっても連携の重要性は増している。規模の小さいLCC各社は財務基盤が弱い。JALのLCC子会社で、国際線専門で中型機の米ボーイング787を使用するジップエア・トーキョー(同市)以外は小型機を使用。コロナ下で単価が高まった貨物輸送の収入も獲得しにくい。LCC各社も巨額の赤字を計上してきた。大手による資金面などのバックアップは大きい。
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