小田急百貨店新宿店本館(東京・新宿)や東急百貨店本店(同・渋谷)など、都内の電鉄系百貨店で建て替え計画が相次ぎ動き出している。かつて私鉄はターミナル駅に集客のために百貨店を開いた。しかし計画の中には建て替え後のビルに百貨店を元のように入れるか未定のものも多い。相次ぐ計画は、電鉄系百貨店の存在価値を根源から問い直している。

※「日経MJ」2022年10月5日付記事「百貨店、駅の顔でなくなる日」を再構成したものです
営業を終えた小田急百貨店新宿店本館の売り尽くしセールの模様
営業を終えた小田急百貨店新宿店本館の売り尽くしセールの模様

 2022年10月2日午後9時すぎ。小田急百貨店新宿店本館のシャッターが閉められた。最後の日を見届けようと、多くの人が詰めかけ別れを惜しんだ。

 夫婦で最後の買い物に訪れたという新宿区に住む50代女性は「小田急沿線にずっと住んでおり、20年以上買い物に通っていた。思い出の建物がなくなってしまうのはさみしい」と感慨深げに話した。世田谷区に住む60代女性は「子供の頃から家族でよく来ていた百貨店だった。新宿駅西口を一望できるのはここだけで、最後に西口が見渡せる喫茶店から写真を撮って楽しんだ」と話す。

 本館の建物はすでに解体作業に入り、小田急電鉄や東京地下鉄(東京メトロ)が手掛ける新宿西口再開発計画で、29年度に地上48階建て、高さ260メートルの高層ビルに生まれ変わる。

 渋谷でも23年、百貨店が一つ姿を消す。東急百貨店本店が23年1月31日をもって閉店する。跡地には東急・東急百貨店と仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループの不動産開発投資会社による再開発事業で、地上36階、高さ約164メートルの高層ビルが建設される。

 小田急百貨店、東急百貨店とも、建て替え期間中の顧客のつなぎ留めが当面の課題となる。

東急、渋谷の街を「売り場」に

 小田急百貨店は本館に近接する建物「新宿西口ハルク」(東京・新宿)内に22年10月4日、「小田急百貨店新宿店」を改装オープンした。「(あらゆる商品カテゴリーをそろえた)ミニ百貨店では競争力を失ってしまう」(営業統括部の田中宏幸統括マネジャー)と、本館から食品やラグジュアリーブランド、化粧品など競争力のある売り場のみを移設。店舗面積は本館の約2割に縮小する。さらに12月には新宿駅西口地下に食品を取り扱う「デパ地下」を設ける。

新宿西口ハルクの建物に移転オープンした小田急百貨店。スイーツと化粧品売り場が同居する(22年10月4日、東京・西新宿)
新宿西口ハルクの建物に移転オープンした小田急百貨店。スイーツと化粧品売り場が同居する(22年10月4日、東京・西新宿)

 一方、東急百貨店が掲げるのは「閉店後も渋谷で稼ぐ戦略」だ。渋谷駅直結の商業施設「渋谷マークシティ」(東京・渋谷)の1階には和菓子から洋菓子まで約40店舗がひしめくスイーツ売り場が広がる。地下1階には生鮮食品売り場があり、隣接する「しぶちか」には総菜売り場が広がる。計6000平方メートルに及ぶ「デパ地下」形態のこの売り場は実は東急百貨店が運営している。

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