CG(コンピューターグラフィックス)で作られた「バーチャルインフルエンサー」が百花繚乱(りょうらん)時代を迎えている。ブラジルや米国、日本などで数十万から数百万人規模のフォロワーを持つスターが相次ぎ登場。サントリーなど、自前のバーチャルヒューマンを広告塔にする企業も増え始めた。時に本物の人間をしのぐ影響力を持つデジタルな彼らを追った。

※「日経MJ」2022年8月3日付記事「架空の人の『生き方』が好き」を再構成したものです
サントリーのバーチャル社員、山鳥水生の座右の銘は「やってみなはれ」
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 2022年7月下旬、東京で開かれたイタリアの高級ブランド「プラダ」のイベント。会場でポーズを決めるピンクの髪の女性の画像がインスタグラムに投稿された。仮想現実スタートアップのAww(アゥ、東京・渋谷)が開発したバーチャルインフルエンサー「イマ」だ。

 イマは18年に誕生した日本のバーチャルインフルエンサーの先駆けの1人。インスタグラムで約40万人、TikTok(ティックトック)で約49万人のフォロワーを抱え、多くをブラジルや米国、インドなどの海外ファンが占める。

バーチャルインフルエンサー「イマ」
バーチャルインフルエンサー「イマ」
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 経済活動に様々な規制がかけられた新型コロナ禍でバーチャルヒューマンへの関心は高まった。デジタルな彼らは感染リスクに対処しながら移動させる必要もなく、体調不良も起こさない。Awwの佐田晋一郎チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)は「コロナ禍で規制が厳しくなり多くの活動が停止したが、バーチャルヒューマンはそれを乗り越えられた。注目が高まったのは間違いない」と振り返る。

 バーチャルヒューマンには世界各地の企業が活路を見いだしている。21年にはタイの通信大手や中国の炭酸水ブランドがイメージキャラクターにイマを相次いで起用。国外での高い知名度が評価され、東京パラリンピックの閉会式には巨大なイマの顔が登場した。Awwによると足元でのスポンサーやタイアップ、広告出演の仕事は年間50件ほどで、うち半数は海外からの案件という。

世界では影響力あるバーチャルインフルエンサーが台頭している
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企業がバーチャルヒューマンに熱視線、そのワケは?

 スポンサー企業が熱視線を送るワケはコロナ禍だけではない。理由の1つはZ世代への訴求力の強さだ。

 Awwによると、イマのフォロワーは6割を17~27歳が占める。「デジタルネーティブであるZ世代は匿名のデジタルコミュニケーションに慣れており、バーチャルの存在にも抵抗がない。一方で広告を好まず、信じられる情報かどうかを重要視している」(佐田CMO)。イマはモノを売るだけを目的とした「従来型の広告」の依頼は断ることも多い。共感できる商品やサービスだけを発信するスタイルが若者の支持につながっている。