廃棄されるごみや食品などを付加価値のある新たな製品に生まれ変わらせる「アップサイクル」でビール関連の商品が続々登場している。サッポロビールはビール原料の麦芽の殻などを使ったジーンズを製造。廃棄されるパンやお茶を材料に使うビールも登場した。ブランドや商品自体の価値を高める手段として注目が高まっている。
「ここまで応募が集まるとは思っておらず、予想以上の反響だった」
サッポロビールの荒木進之介アシスタントマネージャーは、電子商取引(EC)専用で2022年4月に発売したジーンズの人気ぶりをこう振り返る。限定30着に応募は約1600件。価格は4万1800円と高額ながら人気を得た秘密のひとつはアップサイクルにある。
「黒ラベル Malt&Hops JEANS(HANDMADE)」と名付けたジーンズの生地の原料に使われたのは、黒ラベルの製造工程で廃棄される麦芽の殻「モルトフィード」やホップの茎や葉。サトウキビの搾りカスからジーンズなどを製造する「SHIMA DENIM WORKS」(沖縄県浦添市)と連携した。
まずモルトフィードなどから和紙を作製。その和紙から糸を紡ぎ、デニム生地に織り込んだ。モルトフィードは家畜の餌などに使われてきたが、ジーンズに生まれ変わるのは初めてだという。
モルトフィードのデニム生地は軽く、通気性も良いのが特徴。さらに細部のデザインにもこだわった。黒ラベルらしくやや黒みがかった生地に、レザーパッチには黒ラベルのシンボルでもある星のロゴをあしらった。
「ジーンズはこだわりの強いファンが多く、長年はいて味が出る。ファンとともに人生を歩むブランドという点で黒ラベルと共通しており、個性を生かせる」。黒ラベルのマーケティングを担当する斎藤愛子氏はこう話す。
応募した1600人は黒ラベルのファンサイト「CLUB黒ラベル」の会員でもある。ボタンにはサッポロビールの創業年でもある「1876」をデザインするなど、随所に黒ラベルの世界観を表現したデザインだけでなく、黒ラベルの副原料を活用するという付加価値を与えたのは「アップサイクルによる商品を通じたブランド体験で、生活の一部の入り込めばもっと熱狂的なファンになってもらえる」(斎藤氏)と期待するからだ。
「使い切る」を値打ちに変える
ビールの副産物をアップサイクルするサッポロとは逆の動きもある。廃棄食材を新たなテイストのビールへとアップサイクルさせる動きだ。
アサヒグループホールディングス(GHD)が設立したサステナビリティーの新会社「アサヒユウアス」は狭山茶の茎の皮「ケバ茶」を使ったビール「狭山グリーン」を発売した。通常の工程で製造したビールに、水出ししたケバ茶を3割程度まで加えた狭山グリーンは、ほのかに香る茶の香りが特徴だ。
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