各部門が店舗やネット上などでばらばらに収集していた顧客データを集約することで、販促や営業の力を底上げしようという企業が増えている。データを集約し、顧客の趣味趣向を分析する「CDP」(カスタマーデータプラットフォーム)の仕組みを生かす。他社経由のデータが使いにくくなるなか、自社で活用し切れていないデータに目が向けられている。
「Aグループの顧客は購入確率が7割なので、ベテランの営業マンを充てて成約を勝ち取ろう」――。
SUBARU(スバル)のディーラーでは、こんな工夫がなされている。同社はキャンペーン応募やアンケートなどで得た見込み客のリストをディーラーに送る際、購入が見込みやすい順に顧客を5段階にグループ分けする。見込み客の数は数千件にのぼるケースもあり、ディーラーが営業の優先順位を付けられるようにする。
グループ分けに活用するのが、スバルが保有する顧客データだ。例えば自社のブランドサイトにどれくらいの頻度でアクセスし、どのコンテンツを閲覧したか、検索や見積もりなどサイトでの行動も把握。キャンペーンや試乗イベントなどで得たアンケートへの回答内容も組み合わせることで、顧客の行動や趣味趣向を詳しく分析する。さらにその人が実際に購入に至ったかどうか、ディーラーの持つ情報もひも付けることで、どのような行動パターンの人が購入に至りやすいかを人工知能(AI)が分析する。
これまでに最も購入しやすいAグループの購入確率は7割、それに続くBグループは5割という実績が出ている。各ディーラーは購入確率が高い顧客にベテランを充てて商談の時間を割くなどの独自の工夫ができる。スバルもグループごとにメールの内容を変えたり、ウェブサイトのコンテンツを変えるなどの工夫ができる。
購入後の顧客体験の向上にも取り組む。同社は2021年12月に、「SUBAROAD」(スバロード)というドライブアプリを提供し始めた。現在は千葉・房総半島や伊豆など、土地の景色やドライバーの好奇心をくすぐるコースを複数提案している。一般に自動車メーカーは購入後に消費者と接点を持つことが難しいが、スバルはドライバーが実際に走ったコースやスポット、走行距離、時間、加速度、聴いた音楽など、運転の傾向を把握することで、一人ひとりにあったドライブコースを提案することを目指す。
同社は21年、店舗やウェブサイト、アプリ、イベントでのアンケートなど複数のチャネルの顧客データを蓄積して、一人ひとりにあった商品やイベントをPRするためのシステムを構築した。顧客の傾向を参考に車両開発にも生かすことができる。スバルのビジネスイノベーション部の安室敦史氏は、データ活用の狙いについて「『この人にこれをお勧めすると喜ばれる』ということを把握するのが目的。顧客に野菜をお勧めする八百屋の主人と同じように、自社の顧客を理解することに尽きる」と話す。
同社のように、店舗やウェブサイト、アプリなどの顧客行動データを集めて、施策をパーソナライズ化する手法をCDP(カスタマーデータプラットフォーム)と呼ぶ。
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