マーケティングのデジタル活用は当たり前となり、DX(デジタルトランスフォーメーション)の手段はいくつもある。だが、ツールの使い方を誤れば「落とし穴」が待っている。着実な成果をどのように出していけばいいのか。今回はWebサイトのABテストについて、デジタルマーケティングの専門家、垣内勇威氏が解説する。
マーケティングDXの担当者は忙しい。DX人材の不足により、担当できる人数は少なく、さらに他業務との兼務者も多い。そればかりではない。成果の上がる見込みのない、言ってしまえば無駄な業務を捨てられていないことも、マーケDX担当者が多忙である原因だ。
一度作れば終わりのテレビCMとは異なり、マーケDXの施策は継続的な運用が必要だ。そのため、やらない業務を決めて捨てていかなければ、担当者の業務は雪だるま式に増え続ける。その結果、本当に必要な業務に手が回らなくなってしまう。
今回取り上げる「WebサイトのABテスト」も、いたずらに担当者の工数を奪う一方で、成果がほとんど上がらない施策の代表だろう。なお、ABテストはバナー広告のデザインの検討などでも使われることがあるが、本稿はWebサイトに関するABテストに限って論じていく。
社内説明しやすい「数字の誘惑」に負ける
ABテストとは何かを改めて説明する。同じ期間に2パターン以上のWebページを用意し、ユーザーごとにランダムで出し分け、どちらが良い結果を残すかデータで比較検証する手法だ。複数のWebページ案があり、その良しあしに迷いがある場合に用いる。
同期間でユーザーの反応を比較できるため、外部条件をそろえやすい。例えば、季節別の繁閑差や、流入別のユーザー属性差などの影響を気にする必要がない。
最大の特徴は、テスト結果が数値で明確に出ることであり、複数案に対して白黒はっきりと決着がつけられる。定量的に明確な答えが出るという気持ち良さから、好んでABテストをする企業は多い。ABテストが、社内説明で必ず求められるケースすらある。
しかしこのABテストを通じて、Webサイトの成果が伸びるケースは極めて稀(まれ)だ。成果が出ない原因は後述するが、この「数字の誘惑」に負けて無駄なABテストが繰り返されている。複数案のWebページを企画し、データで実験するという業務は、なんとも真面目に仕事している感を演出してくれるが、それは大抵の場合、担当者の自己満足にすぎない。
ほとんどのABテストで成果が出ない理由とは?
まずABテストで一番よくある結果が「ほとんど差が出ない」だ。ABテストを科学の実験か何かと勘違いしてしまうのか、変数をできる限り減らし、白黒つけようとすると、この失敗に陥る。例えば、ボタンの色を緑と青で比べたり、ファーストビューの見出し文言をわずかに変えたり、コンテンツの並びを替えたり、といった細かすぎるテストを実施してしまう。
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