『ドラクエウォーク』や『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』などの既存タイトルは手堅かったものの、2022年9月期第2四半期までの業績は前年同四半期比で減収減益となったコロプラ。22年から23年にかけては合計15本もの新作を準備し、VR(仮想現実)関連の新サービスを展開するなど巻き返しを図る。21年12月、創業者の馬場功淳氏からバトンを引き継ぎ、代表取締役社長に就任した宮本貴志氏に、今後の方針を聞いた。

コロプラ代表取締役社長の宮本貴志氏
コロプラ代表取締役社長の宮本貴志氏

新作を作りやすい環境を整える

――まずは、2022年9月期の第2四半期を終了した時点で、振り返っていただいて21年と比べていかがですか?

宮本貴志社長(以下、宮本) 日本のゲーム業界(主にスマートフォンゲーム)は、21年を通じてほぼ横ばいだったと認識しています。スマホゲームのヒット作品を見ると、全体的に日本勢の勢いはなくて、中国勢の攻勢が強まりました。また、ブロックチェーンやNFT(非代替性トークン)など、注目の技術を使ったコンテンツがいよいよ出てきたぞ、という印象です。

――日本製ゲームの勢いがなかったと感じる理由はありますか。

宮本 やはり当社も含めて新作が作りにくくなってきているんじゃないですかね。1本制作するにあたって必要な開発費が年々高騰していますし、デバイスのスペックの上昇に合わせて、タイトルの要求度も高くなってきます。

 手軽に遊べるハイパーカジュアルゲームの勢いがあった時期もありましたが、それも落ち着きましたし、日本のスマホゲーム市場としては5年前みたいに伸び続けているわけではないと思います。

――その中で、御社はいかがでしたか。

宮本 『ドラゴンクエストウォーク』(スクウェア・エニックス)が21年9月に2周年という大きな節目がありました。さかのぼって同年4月に新作『ユージェネ』(現在は『ユージェネライブ』にリニューアル)をリリースできたのも大きなトピックでした。『ユージェネ』は非常に挑戦的なタイトルで、ゲームキャラクターたちが毎日、生配信をするというゲームです。

『ドラゴンクエストウォーク』 ©2019-2021 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.
『ドラゴンクエストウォーク』 ©2019-2021 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.
『ユージェネライブ』 ©COLOPL, Inc.
『ユージェネライブ』 ©COLOPL, Inc.

 AR技術を使って、目の前でゲームキャラクターが(VTuberのように)生ライブを披露したり、オープンワールド型のゲームを楽しめたりという複合型のアプリになっています。ARで表示されたゲームキャラクターは、3次元的に目の前の空間に表示されて、タッチするという体験ができるんです。とりわけすごいのが、このゲームキャラクターとのやり取りが、生配信でありながら、ほとんど遅延がないという点です。

 『ユージェネ』の売り上げはまだまだ足りていませんが、こうした新しいタイプのアプリから得られる技術、運営ノウハウ、知見などは、今後のコロプラに生かされると思います。

――21年12月に、宮本さんがコロプラ2代目社長になられたのは、コロプラにとって大きな出来事だったのでは?

宮本 確かにそうですね。創業者の馬場功淳が代表取締役会長・チーフクリエイターになり、私が社長になったというのは、大きな出来事だったかもしれません。馬場はもともとモノづくりの人なので、チーフクリエイターとして、開発責任者として現場に入るのは自然な流れだと思います。

 現在、コロプラはグループ会社を含めると1400人規模の企業体になっていますが、『魔法使いと黒猫のウィズ』や『白猫プロジェクト』『ドラクエウォーク』といったヒット作をコンスタントにリリースしているのは、他社でもなかなかできないことだと思っています。これからもそうしたヒット作を次々に作れる体制づくりを強化するという意味で、ゲーム開発を馬場が率いるということは重要なメッセージです。

 ただ、私が社長になるというのは思ってもみなかったです(笑)。2年前にコロプラに入社してからは、マーケティングを担当し、社内のいろいろな部署と関係していますから、社内の動向はある程度把握できていました。突然、社長になったからといって会社を大きく変えるということはないですが、経営の見える化したり、新作を作りやすい環境を整えたり、と取り組まなきゃいけないことは実は山ほどあるんですよ。

 いろいろな方々から「社長になって何をやりたいですか?」って聞かれるのですが、「きちんとヒット作を出せるいい会社にしていきたい」って答えています。難しいことなんですけどね。

 実際、エンタメ業界(ゲーム業界)は短期的に見ると浮き沈みが激しいタイプの企業が多いと思います。その中にあって、コロプラは長期的にとらえて、成長できているような企業だと思ってます。直近の売上高などの指標を見ると、若干右肩下がりになっているのは事実です。しかし、新作を開発するための財務的な余裕は十分にありますし、同時にこれまでの作品をないがしろにしないで育てていきたいですね。

年に2、3本の新作ゲームをリリースしたい

――2022年9月期第2四半期の決算発表では、新作の開発がグループ全体で15本あると発表しています。

宮本 可能な限り、年に2、3本の新作はリリースしていきたいと思っています。まずは、22年のリリースを予定している『白猫GOLF』があります。現段階は最終的にクオリティーを上げるための調整を、まさに馬場本人がかじ取りをして進めているところです。

『白猫GOLF』 ©COLOPL, Inc.
『白猫GOLF』 ©COLOPL, Inc.

 『白猫GOLF』は全世界でリリースする予定ですが、普通のゴルフゲームとちょっと趣が異なっているんです。見た目は「白猫」シリーズなんですが、中身はリアルでシビアなプレーを要求される対戦型ゴルフゲームです。

 例えばゴルフ場を借り切って、ゆっくりストレスなくゴルフをプレーできると、いいスコアが出るじゃないですか。これがよくあるゴルフゲームです。『白猫GOLF』はそうではなく、他の組に混じってゴルフコースを回ると、そういう時の特有のプレッシャーを受けながらプレーすることになる。すると、いつもの練習ではしないミスが出る――というような味付けに仕上がっています。

 スマホ画面でできるゴルフゲームの操作にこだわって作っていますから、実際にプレーしていただくとそのこだわりを理解していただけると思います。コロプラ本体ではこの『白猫GOLF』を入れて、7本のスマホゲームの開発パイプライン(制作工程全体のこと)を走らせています。リリースフェーズがまちまちなので、現在発表できるのは『白猫GOLF』くらいですね。

 15本ある開発パイプラインのうち、残り8本は家庭用ゲームタイトルを予定しています。大型タイトルで言うと、子会社となったMAGES.(メージス)が7月28日にリリースした『ANONYMOUS;CODE』(アノニマス・コード)ですね。これは、開発発表してから7年かかったアドベンチャーゲームで、企画・原作は志倉千代丸が担当する期待作です。

『ANONYMOUS;CODE』 ©MAGES./Chiyo St. Inc.
『ANONYMOUS;CODE』 ©MAGES./Chiyo St. Inc.

 このほか、6月2日には『映画「五等分の花嫁」~君と過ごした五つの思い出~』をNintendo Switch版とPlayStation4版で発売しました。これは映画作品の公開に合わせたアドベンチャーゲームです。少し先になりますが、9月8日にリリース予定の『アリス・ギア・アイギスCS』もあります。これはコロプラのスマホゲームIPを、ピラミッドが家庭用ゲームタイトルにした対戦型アクションゲームです。

『映画「五棟分の花嫁」~君と過ごした五つの思い出~』©春場ねぎ・講談社/映画「五等分の花嫁」製作委員会 ©MAGES.
『映画「五等分の花嫁」~君と過ごした五つの思い出~』©春場ねぎ・講談社/映画「五等分の花嫁」製作委員会 ©MAGES.
『アリス・ギア・アイギスCS』 ©2022 Pyramid,Inc.
『アリス・ギア・アイギスCS』 ©2022 Pyramid,Inc.

メタバースに活用できる技術はある

――ここ1、2年話題となっているメタバースに対するアプローチは考えていますか?

宮本 ゲーム領域では今は特に考えていません。しかし、要素技術でユニークなものがあります。先ほどご説明した『ユージェネ』では、自社開発の「スターエンジン(STAR ENGINE)」と名付けた技術を使っています。

 「スターエンジン」はスマホ同士のコミュニケーションの遅延をなくすために、データ転送が非常に高速になるような仕組みになっています。データの遅延が極端に少ない「スターエンジン」を組み込むことで、とてもスムーズなやり取りができる「メタバース」サービスが生まれたりすると、新しいビジネスの可能性も出てきます。

 例えば、360Channelという子会社では、「Webメタバースシステム」を22年2月に発表しました。スカパーJSATが提供した「バーチャルホークス春季キャンプ2022 in 宮崎」というコンテンツで、ソフトバンクホークスの春季キャンプ地を3次元CGで表示して、自由に移動しながら、キャンプ映像を見られるという企画でした。Webブラウザーがあればメタバース空間に入れるので、気楽に楽しめるよう工夫してあるんです。こういう選択肢を持てるように、新作や新サービスを開発していきたいと思います。

「バーチャルホークス春季キャンプ2022 in 宮崎」 ©2016-2022 360Channel, Inc.
「バーチャルホークス春季キャンプ2022 in 宮崎」 ©2016-2022 360Channel, Inc.

 他にも、NFTやブロックチェーンは意識しています。ゲーム以外の新規事業が必要だと考えていますので、その一つとして見てはいます。ただし、実際にはどうなんでしょうかね。ゲーム事業の中に取り込んで大成功しているという話は、まだ聞こえてきません。話題は沸騰していますが、エンターテインメントやゲームにどうのように落とし込むのか――。そこが今はまだ難しいように思います。こちらも前述のWebメタバースと一緒に考えると自然かもしれませんね。

――22年の変革でいうと、オフィスを六本木に移転されました。

宮本 22年2月に、9年半、居を構えていた恵比寿ガーデンプレイスから、六本木の東京ミッドタウンにオフィスを移転しました。新型コロナウイルス禍になってオフィス縮小のために移転したと思われるかもしれませんが、面積は縮小していないんです。ちょうど、オフィスの更新の時期が来るので、2年くらい前から準備をしていました。

 ただ、移転準備期間中にコロナ禍になってしまったので、設備を見直して、専門家の意見を取り入れた感染症対策を施しています。例えば、換気設備を大幅に増設したり、床材に抗ウイルス素材のリノリウムを使ったり、と入念に設備を導入しています。

 また、従業員向けのサービスも拡充させています。専門書や雑誌だけではなく、ビジネス書や漫画まで約3000を蔵書した「クマ図書館」、マッサージ師が常駐するマッサージルーム、牛丼の自動販売機、試験運用中のフリーで食べられる無限バナナなどもオフィスに設置しています。時代に合わせて、従業員が働きやすい環境を整えていきたいですね。

『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』 ©COLOPL, Inc.
『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』 ©COLOPL, Inc.

 コロプラとしては、22年に初めて社長が交代したわけで、2代目としてはやはり成果がすべてだと認識しています。従業員が働きやすい環境を整えつつ、新作をコンスタントにリリースできる開発態勢を構築して、数字を作っていくことに向き合っていきたいです。『魔法使いと黒猫のウィズ』も23年3月に10周年を迎えるなど周年事業も増えてきます。ユーザーが喜んでくれるゲーム、楽しんでくれるゲームを盛り上げていきたいですね。

(写真/稲垣 純也)

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